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『後方に敵部隊が出現。第三小隊が側面から攻撃を受けています』


 その通信を耳にしながら先へ進む。その先に二人の蒼龍兵が道を阻むように私たちの前に立ちはだかった。
 槍を投げてくる蒼龍兵に対し、トレイが弓で槍を弾いていく。トレイの弓矢は一本も無駄にすることなく槍を狙っていて、トレイの弓捌きに感心しつつ私は後方からサンダーを放った。

 次のエリアに入った瞬間、後ろの通路が封鎖される。閉じ込まれたのなら突破するまで、そう言わんばかりに各々武器を構えた。


「生きて帰すな!」
「うおっと!テメェ不意打ちかコラァ!」


 ヨクリュウの火球がナイン目掛けて飛んでくる。ギリギリでかわしたナインはヨクリュウをギラリと睨み付けた。ナインが攻撃しようと槍を構えたが、ナインの後ろからエースのカードがヨクリュウを襲い、不意を突かれたヨクリュウは空から落下していく。


「んあぁ!?オイコラエース!俺の獲物だぞ!」
「任務中に獲物だなんだ言ってられないだろ」
「あいつが先に俺を狙ってきやがったんだから俺の獲物だ!」


 何故か威張るナインに呆れながら、私はナインに向かって声をあげた。


「あっ、ナイン!あそこの敵がナインのこと狙ってるような気がする!」
「なんだとコラァ!俺の獲物ー!」


 ヨクリュウに向かって駆け出すナインを見てエースと一緒に苦笑していたら、不意にぐいっと手を引かれた。驚いて前を向くとジャックの後ろ姿が目に入る。


「よぉし、僕も頑張るぞー!」
「えっ、ちょ、私前衛に行く気ないんだけど…!」
「…先が思いやられるな」
「そうですね…」


 エイトとクイーンがそう呟いていたなんて私は知る由もない。
 ジャックに手を引かれながらCOMMに武官の通信が入る。


『どうやら敵に囲まれつつあるようだな。力ずくで突破するぞ』
『通路が塞がれたらどうしようもないクポ。気を付けるクポ』


 火球を放つヨクリュウの攻撃を避けながら、回復魔法を唱えナインに放つ。ナインはヨクリュウの火球を上手く躱すとヨクリュウに向かって槍を投げた。その槍は見事ヨクリュウに刺さり、ヨクリュウは通路に力なく倒れた。
 ヨクリュウのファントマを回収し終えるとモーグリから通信が入る。


『敵の布陣が崩れたクポ!』
「おっしゃあ!次行くぞ次!」
「ナイン元気だね…」
「ナインは元気だけが取り柄だからねぇー」


 ナインが走り出し、その後ろを追い掛けようとしたらジャックが私の手をぐっと引いて引き寄せてきた。眉を寄せてジャックに振り返ると、心配そうな表情をしたジャックと目が合う。


「な、なに?」
「体、しんどくない?」
「えっ…」
「あんまり無茶しないでね」


 そう言うとジャックは私の頭をポンと軽く叩き、ナインの後を追う。呆然としながらその後ろ姿を見送っているとセブンが私の名前を呼んだ。


「メイ」
「!、な、なに?」
「ジャックは私たちよりもずっとメイのことよく見てるぞ」
「…ですね」
「あまり無理するなよ」
「ありがと。皆の足手纏いにならないように頑張る」
「…それを無理をするっていうんだ」


 セブンの呟く声を背中で聞きながら、私は皆の背中を追い掛けた。

 次のエリアに入ると朱雀兵の悲痛な声が聞こえてきた。


『置いてかないで………お願いよ……』


 その先で負傷しているであろう朱雀兵たちが覚束ない足取りで脱出口に向かう姿が目に入る。急いで脱出口の近くまで駆け寄るとモーグリと武官から通信が入った。


『蒼龍軍の部隊が接近中。味方の撤退を援護するクポ!』
『部隊の再編に時間が必要だ。すまんが三分でいい。この場所を守りきってくれ』


 武官の言葉に私たちは頷き合うと、脱出口前の通路と少し広いところ二手に別れ、各々武器を構えた。
 私は脱出口前の通路と少し広いところの間に立ち、両方援護できるよう構える。暫くすると蒼龍兵が現れた。


「手加減は無用だ!」
「心を鬼にせよ!」


 次々と現れる蒼龍兵に混じって、セキガンやショウキも現れる。蒼龍兵はすばしっこいため、脱出口の通路にいる遠距離攻撃組が蒼龍兵を狙ってガンガン攻撃を仕掛ける。役割分担がちゃんとできているお陰で、脱出口を突破されることはなかった。
 短いようで長い三分間、私は防御魔法と回復魔法を駆使して援護に励む。デュースの笛があるお陰で、魔力の消費を最低限に抑えられる。しかしそれはデュースの笛の音が続く間だけだ。デュースが攻撃を受けないように警戒しながら、蒼龍兵に向かってサンダーを放った。


『部隊は無事撤退したクポ。他の部隊を助けに行くクポ。周囲は封鎖したクポ、ちょっとは時間を稼げるはずクポ』
『助かる……これで少しは敵の追撃が鈍るだろう』


 蒼龍兵のファントマを回収しながらモーグリと武官の通信に耳を傾ける。無事撤退できたことにホッと安堵の息を吐いていると、モーグリから任務の更新を言い渡された。


『任務更新クポ!南門方面の味方部隊を援護するクポ』


 モーグリの任務内容を聞いた私たちは一度武器をしまうと南門方面に向かって駆け出した。