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翌朝、COMMから聞こえるジャックの声で目を覚ました。
『メイおっはよー。起きてる?』 「おはよ……起きてるよ…」 『ありゃ?寝起きな声だねぇ?寝坊?迎えに行こうかー?』 「いや、いいです…ところで出撃要請下ったの?」 『えっ、なんで知ってるの?!』 「…すぐ行く」
そう言うとCOMMを切って急いで身支度を整える。まだ体はだるいが、寝る前よりかはだいぶ楽になっていた。身支度を整えた私はトンベリを抱いて、部屋を飛び出した。
教室に入ると既に皆は集まっていて慌てて席に座る。モーグリは私が席に座ったのを見て、声をあげた。
「ブリーフィングを始めるクポ!昨夜、ローシャナの制圧に向かった朱雀軍から援護要請が来たクポ。蒼龍軍の猛撃を受け、朱雀軍は今や全滅の危機に瀕してるクポ。0組はその撤退軍の後衛を務めてもらうクポ!」 「ローシャナといえば朱雀と蒼龍の国境を越えて少し小高くなっている場所にありますよね。どういう経路で行くのですか?」 「既にチョコボを外に用意してるクポ。ただ蒼龍領は朱雀と違って天候が常時悪いし視界も悪いクポ!気を引き締めていくクポ!」
モーグリの言葉を聞いた皆が席を立つ。私も皆に続いて席を立つと、不意に立ち眩みがして足もとがふらついた。慌てて机に手をついて顔を俯かせる。しばらくすると、視界がしっかりしてきてホッと安堵の息を吐いた。
「おい」 「ん?あ、サイスさん、どうかした?」 「あんた今足もとふらついてたろ」 「そう?気のせいだよ」
私がそう言うと、サイスさんは顔をしかめながら舌打ちをする。サイスさんに気付かれればきっと、調子が悪いなら着いてくるなと言われるかもしれない。それだけは避けたくて、気付かれないうちに私は足早に教室を飛び出した。
魔導院から出ると既に人数分のチョコボが用意されていて、チョコボに跨がる皆を見て私もニンジャチョコボに跨がる。エースとジャック以外の子達がニンジャチョコボを珍しげに眺めているのに気付いた。
「ねぇそれまさかメイ専用のチョコボ?」 「うん、一応ね」 「私たちもチョコボの交配について色々と試してきましたが、ニンジャチョコボにお目にかかるのは初めてです」 「そうなんだ」
興味津々だと言わんばかりに目を爛爛させるトレイを見て苦笑いを浮かべる。0組がチョコボの交配について勉強していたことに感心しながら私たちは魔導院を後にした。
エイボン地方に入りトグアの町を抜ける。朱雀と蒼龍の国境が見えてくると、私たちはフードを被った。国境から先は豪雨となる。視界も悪くなるため慎重に進んでいかなければならなかった。 国境を越えて、暫くの間森の中を駆け抜ける。ふと寒気がして、手綱を持っていない手で体を抱き締めた。昨日の影響のせいかもしれない。皆の足手まといにならないようにしないと、そう思いながら下唇を噛んだ。 森を抜けると少し小高い場所にローシャナの町が目に入る。私たちはチョコボを安全な場所へ待機させると、ローシャナの町へ踏み込んだ。
ローシャナの町の入り口に朱雀武官の姿があり、私たちに気付くとこちらだと言わんばかりに片手を上げる。急いで武官に近付くと、少し顔をしかめながら口を開いた。
「少々、状況に変化があった」 「どういうことですか?」 「今は説明してる暇はない。COMMで説明するから先へ急いでくれ」
朱雀武官がそう言うと私たちは顔を見合わせ頷き合うとローシャナの町に進軍した。町に入ってすぐに通信兵から連絡が入る。
『これから脱出作戦を開始するわ。0組はシンガリとして、敵の侵攻を出来うる限り食い止めて!』 『敵の本隊が町に突入した。これからが本番だ。心してかかれ』 『道が封鎖される前に急いで脱出するクポ!』 「よっしゃ、行くぜコラァ!」 「油断は禁物ですよ、ナイン」 「早速お出ましか」
先に進むと朱雀兵がヨクリュウと戦っているのが目に入る。ヨクリュウは空を飛びながら火球を放ってきた。それをかわしてケイトがヨクリュウ狙って魔法銃を放つ。ヨクリュウに攻撃できない私は、プロテスをかけながら後衛で皆の援護に徹した。 ヨクリュウを倒すと蒼龍兵が襲い掛かってくるが、それも難なく倒していき次のエリアへと急いだ。 エリアに入ると朱雀兵が二人の蒼龍兵に襲われているのが目に入る。すぐに援護しようとしたけれど、蒼龍兵に攻撃する前に槍が朱雀兵を貫き力なく倒れた。
「噂の朱雀もこの程度か」
そんな呟きが耳に入り思わず顔をしかめぐっと拳を作る。朱雀兵を殺した蒼龍兵たちは私たちに気付くとこちらに向かって駆け出して来て槍を振るった。
「はっ!」 「ぐあっ!」 「よーいしょっと〜」 「ぎゃあああ?!」
二人の蒼龍兵はエイトの重い一撃と、シンクの一撃で事切れる。しかしすぐに二人の蒼龍兵が現れ攻撃を仕掛けてきた。 すかさず前衛にいるジャックとクイーンにプロテスをかける。蒼龍兵の槍がプロテスで弾かれるとジャックとクイーンが一気に詰め寄り、刀と剣が蒼龍兵を貫いた。
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