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南通路を通過し東階段へと差し掛かる。襲いかかってこようとする皇国兵を無視し走り抜ける私たちはあちらからしたらどう見えるのだろうか。東階段へ着いたとき、タチナミ武官から無線が入った。
『内縁部に皇国のシュミッツ司令官を確認。0組は直ちに向かってくれ!しかし、シュミッツが自ら出てくるなんて一体…』
タチナミ武官の独り言が無線から漏れる。シュミッツ司令官が自ら出てくるなんて、とタチナミ武官は言った。それほど珍しいことなのだろうか。 北階段へ着くと私たちは武器を取り出し皇国兵へと斬りかかった。ジャックが前衛セブンが後衛、そして私は2人を間に入り援護の魔法を唱える。2人は次々と皇国兵を倒していく。
「ここまでとはな…。魔人の呼び名、伊達ではないようだな」
その声に反応して階段の上に目線を向けると、皇国兵とは違う服装でこちらを見下している人間がいた。あの服装からして多分あれがシュミッツ司令官なのだろう。
「出るぞ!戦闘可能な兵は続けー!」
シュミッツ司令官の声で皇国兵が奮起し、動きも先ほどより速くなった。 私はジャックとセブンの回りにウォールを張り、武器を取り出して参戦する。シュミッツ司令官は次々と倒れていく皇国兵の姿を見て怖じ気ついたのか後退り、建物の中へと逃げていった。北階段にいた皇国兵を掃討した私たちにモーグリから無線が入る。
『任務クポ!シュミッツは少数部隊を率いて籠城を続けているクポ。0組は直ちに掃討に向かうクポ!』
その無線にセブンは他の皆には私が無線で伝えておく、と言ったのでお願いすることにした。セブンが無線で他の0組とやり取りをしている間、私とジャックはその光景をボーッと眺めていた。
「…セブンはしっかりしてるなぁ」 「そうだねぇ…あれ?メイ、腕切れてないー?」 「え?」
右腕を見てみると確かに服は切れていた。しかし痛みは全く感じない。切れている服の中を覗くと肌には傷一つついておらず、ただ服だけが切れている状態だった。多分皇国兵の銃弾で服だけ切れたのだろう。 心配そうに腕を眺めるジャックに服を捲って無傷なのを見せるとよかった、と呟いた。
「待たせてすまない」 「あ、いや、ありがとうセブン」 「よーし、そんじゃいっちょ行きますかー!」
──皇国軍司令部
そこへ入ると皇国軍が一斉に襲いかかってきた。銃を乱射してくる皇国兵に、私は銃弾を避けながら素早くサンダーを唱え皇国兵へと放っていく。セブンとジャックも次々に皇国兵を倒していき、とうとうシュミッツ司令官だけになった。 1人になってもなお攻撃をやめようとしないシュミッツ司令官にジャックは容赦なく斬りつけ、呆気なくシュミッツ司令官は倒れる。 こうして無事にトゴレス要塞奪還作戦は成功に終わった、かのように見えた。
『内縁部の制圧を確認。トゴレス要塞奪還は成功だ。正規軍は皇国の残存部隊への追撃を開始するが、0組は……どうした!応答しろ!今の緊急通信はどこから…』
タチナミ武官から次の任務の内容が伝えられようとしたとき、タチナミ武官の無線に緊急通信が届く。私とセブンとジャックはとりあえず先に0組と合流しようということになり司令部から急いで出た。 私も2人に着いて行こうとしたとき、COMMが反応する。
『メイ、今大丈夫か?』 「?はい、大丈夫ですが」 『すまないが未確認魔導アーマーを確認した。負傷者が多数出ている。今すぐ負傷者の元へ向かってくれ!』 「わかりました、でも魔導アーマーは…」 『魔導アーマーは0組に任せることになった。至急メイは正面階段へ急いでくれ』
そう言うとタチナミ武官からの無線が切れる。私はセブンとジャックを引き止め、事情を話した。
「…だから2人は魔導アーマーの対処にあたって」 「僕もメイと一緒に…!」 「ジャック、あなたは0組。私は9組。組が違うんだから、別れ別れになるのは仕方ないよ。セブン、無理矢理にでも連れてってね、2人とも気を付けて」 「ああ、わかった。行くぞ、ジャック!」 「〜〜っ、すぐ戻ってくるからねぇ!」
セブンとジャックと別れた私は急いで正面階段に向かう。向かう途中、魔導アーマーらしき物が空を飛んでいるのを確認した。
正面階段に着くとほとんどの朱雀兵がやられていて、魔導アーマーの強さを物語っていた。意識のある朱雀兵を探し、見つけては助かる見込みがあるかを確認する。
「…ううっ…!」 「大丈夫ですか、しっかりしてください!」
傷を負っている兵士一人一人に回復魔法を唱え傷を癒していく。回復魔法といっても致命傷を負ってしまった兵士には何も効きやしないし、致命傷を負っていない兵士にだってこんなの気休め程度にしかならない。早めに魔導院へ運ばなければ、致命傷を負っていなくても手遅れとなってしまう。
不意に爆発音が聞こえる。きっと0組と魔導アーマーが戦闘を開始したのだろう。 0組の無事を祈りながら、負傷している兵士に回復魔法をかけ続けるのだった。
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