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──魔導院ペリシティリウム朱雀
白虎との大戦を終えた朱雀は学院の復興に精を出していた。 0組(クラスゼロ)の活躍により、白虎から朱雀を守ることができ、暫くは戦争が起こることはないだろうと誰もが思っていた。
「はあー…」 「よう」
リフレッシュルームで一時の休憩をとっていると、バンダナをした青年が声をかけてきた。 こいつは私と同じ村出身、しかも同じ組になってしまった所謂幼なじみのナギ・ミナツチだ。
「よう。…"みんなのアイドル、ナギ"さん」 「やめてくれよ、照れるだろ」 「嫌味なんだけど」
相変わらずのお調子者だが、任務のときは誰よりも頼りになる男。そんなナギは色んな人から慕われていた。 私はそんなナギの右腕とも言われていたりする。何故ナギの右腕にならなきゃいけないのだろうか。不本意である。
「つれねぇなー俺とメイの仲じゃんよ」 「どういう仲だよ。ただの幼なじみでしょ」 「俺の右腕じゃん」 「それは皆が勝手に言うだけじゃん」
オレンジジュースを一気に飲み干す。そんな私にナギはニヤニヤしながら私の隣に座りコーヒーを注文した。 居座る気満々なナギをじとりと睨み付けると、ナギは苦笑いしながら口を開いた。
「んな嫌そうな顔すんなって」 「わかってんならなんで座るかなあ」
溜め息を吐いて頬杖をつく。 昔からナギは少々強引なところがあるため、こういうことは日常茶飯事だった。最初こそ鬱陶しかったけれど、今ではすっかり慣れてしまった。
「マスター!僕にもコーヒーちょーだい!あ、ミルクは絶対つけてねぇ」
明るいかわいらしい声がナギの隣から聞こえてきた。自然と目線を移すと長身で髪は金髪、そして朱のマントを纏った男が立っていた。 朱のマントを見てすぐに、0組の子だと気付く。朱のマントは0組しか付けていないから。
「お!あんた、0組か!初めまして、だな!」 「んー?初めまして…キミ誰?」 「俺は"みんなのアイドル、ナギ"だ!」
初対面の相手にも自分がみんなのアイドルだと自称するナギは、一種のナルシストに入るだろう。
「ふーん…僕はジャック。よろしくねえ」 「おう!これから世話になることも多くなるからな。よろしく頼むぜ!あ、あとこいつ、メイ」
いきなり話を振られギョッとする。ちらりと顔を向けるとジャックと言う子が私のほうを凝視していた。
「(えええー!私も自己紹介しなきゃいけないの!?)………よ、よろしく…」
ナギとジャックくん?から見つめられ、ここは挨拶しておかないと後々うるさいだろうな、と思い愛想笑いで返す。 ジャックくんもにこりと愛想のいい笑みでよろしくーと言ってきた。なんていうか、ナギに少し似てる気がする。
「メイさんもナギと同じ組なの?」 「そうだぜ。あ、こいつのことも呼び捨てでいいって!」 「………」 「え、いいの?じゃあ、僕のこともジャックでいいよー」
私に拒否権はないらしい。何故私の権利をナギに全部決められなくてはいけないのか。いや、こいつはこういうやつだった。
「へぇーナギたちは9組なんだ」 「おう、あ、9組は落ちこぼれ組だとか聞いた?」 「ん?いやー聞いてないよー。落ちこぼれなの?」 「落ちこぼれなんかじゃねぇからな。言いたいやつには言わせとけばいいけど。証拠がメイだ」 「は?」
またいきなり話を振られ、心の中で頭を抱える。 私は特別0組と仲良くしたいわけではない。仲良くしたところで死んでしまったらその人の思い出がなくなってしまうから。だから私はいつも独りなのだけれど。
「なんでメイが証拠なの?」 「こいつ、こう見えてめちゃくちゃ頭いいし、しかも魔法だってすげぇんだぜ?9組にいるのが不思議なくらいだ。ちなみに俺の右腕も務めてる」 「だから、右腕なんかになった覚えないから!」 「………2人は、そのー恋人?なの?」 「「えっ」」
ジャックの発言に固まる。ナギはナギで目を丸くさせてジャックを凝視していた。何も言わないナギに慌てて私は否定の言葉を口にする。
「ち、違う違う!全然恋人でもなんでもないから!」 「えー?そうなの?」 「そう!ただの幼なじみ、ただの!幼なじみなだけだよ!」 「そこまで言われたらさすがの俺でも傷付くんだけどなー」
ただの、を強調させてジャックに言う。しかしジャックはジャックでにこにこ笑ってるのを見て、ああ、こいつ絶対勘違いしてる、そう思った。 なんだか居づらくなった私はマスターにお礼を言って、ナギにちゃんと誤解解きなさいよ!と言い、ジャックにまたね、と手を振ってサロンを後にした。
きっとあの様子じゃナギは誤解を解くこともなさそうだから、今度ジャックに会ったら、きちんと誤解を解いておこう。
「……ナギはどうなのさ?」 「…あそこまで否定されると悲しいなーとは思うけど。まだ、恋人なんかじゃないな」 「…ふーん?」 「おっと、無線が入っちまった。じゃ、俺行くわ!またな」 「うん、またねー」
ナギとメイ。
その二人の名前はジャックの頭の中に深く刻み込まれた。
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