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「ナギって、あのナギ?」 「そうだけど」
呆然とする皆を見て私は眉を寄せる。そういえばナギと幼馴染みだってことはジャック以外に言っていなかったかもしれない。でもそれにしたってなんでジャックまで呆然としているのだろうか。
「ナギと同郷だったなんて知りませんでした」 「ジャックから聞かなかった?」 「いや、聞いてないな」 「というかなんでジャックまでびっくりしてるんだ?二人が幼馴染みなの知ってたんだろ?」
エースがそう言うとジャックはハッと我に返り、「そうだったねぇー」とぎこちなく笑う。明らかに何かあったのは察しがついたが、でもその何かは私にはわからなかった。 そんな中、ケイトが顔をニヤニヤさせ意味深に笑う。
「へぇー、だからあんなに仲が良いわけだ」 「そんな仲良いように見える?」 「確かに仲良しさんだよねぇ〜。端から見たら彼氏彼女みたいだし〜」 「いやいやシンクったら何言うのさぁ!メイはそんなつもりないってー」 「オイ、なんでジャックが答えるんだよ」 「…まぁ確かに驚きはしたが、それでなんで候補生になったんだ?」
なんて返そうか悩んでいたらセブンが上手いこと話題を逸らしてくれる。私はワイワイ騒ぐジャックとシンクを横目に、口を開いた。
「わからない」 「え?」 「わからない、のですか?」 「うん。ナギが候補生になるからって、無理矢理私も候補生にさせられただけだから」
これといった理由はない。そう言うと意外だったのか、皆きょとんとした顔をしていた。いつの間にかジャックとシンクも静かになっている。 それを苦笑しつつ眺めていたら、サイスさんが眉をひそめながら口を開いた。
「候補生になりたくなかったっつーことかよ」 「候補生になりたくなかったってわけじゃないけど、でもそう捉えられても仕方ないよね」 「つーかアンタそんなんでよくここまで生き残ったわね…」 「そりゃあ、候補生になってから色々あったし」 「色々?」 「うん、色々」
そう言うと、ちらりとジャックを盗み見る。ジャックはわかっていない様子で安心した。 私は候補生になって、ムツキやカルラ、リィドさんたちに出会って、そしてジャックやみんなと出会った。そのなかで生活や任務を共にして、やっと候補生になってよかったと思えることができた。だから、ここまで生き残ることができたのはみんなのお陰なのだ。こんなこと恥ずかしいから言わないけれど。 そんな中、私の言葉が気になったのか、レムさんが首を傾げながら口を開く。
「メイさん、色々ってなぁに?」 「まぁ、簡単に言えばみんなのお陰ってことです」 「えー!ちょっとはしょりすぎ!もっと詳しく教えなさいよ!」 「これ以上は言えません」 「ケチ!」 「なんとでもどうぞ」
ケイトは頬を膨らませる。その膨れっ面がかわいらしくて、思わず吹き出してしまった。
「なっ、何よ、急に笑ったりして」 「あはは、いや、ケイトかわいいなぁって」 「はぁ?!か、からかわないでよね!」 「あは、ケイト顔赤くなってるよぉ〜」 「シンクまでからかわないで!」
顔を赤くさせるケイトをシンクが茶化す。そこにサイスさんも加わりケイトを茶化すと、ムキになったケイトがサイスさんに絡み始めた。それをデュースさんやクイーンさんが止め、セブンは呆れたように溜め息を吐く。本当に仲が良いなぁと思いながらふとレムさんに視線を移すと、レムさんは笑みこそ浮かべているが、何処と無く寂しげな表情だった。 レムさんに話し掛けようと口を開きかけたその時サイスさんに絡んでいたケイトがキッと私を睨み付ける。それに気付いた私は開きかけた口を閉じると、ケイトは顔をずいと近付けて口を開いた。
「アンタさ、結局どっちが好きなの?」 「…え?」 「ケイト、無粋なことを言うのはよしなさい」 「えぇー、気になるじゃん。ねぇ、デュース」 「え、あ、気にはなりますけど…」 「そういうのは当人同士の問題だろう。それに今更私たちがお節介を焼くこともない」
そう言いながら私を見るセブンに、私は気恥ずかしくなり顔を俯かせる。察しがいい人には気付かれているのだろう。セブンには本当に敵わない。 ケイトは気付いていないのか、不思議そうに首を傾げていた。
「セブン、今更ってどういうこと?」 「そのうちわかるさ」 「そのうちっていつ〜?」 「いつだろうな。な、メイ」 「…い、いつかわかるよ」
頬が熱くなるのを感じながら、グラスに残っている薄いカフェオレを一気に飲み干した。
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