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本を返し終わった私たちはケイトたちがいるリフレに向かう。魔法陣でリフレに着くと、ケイトたちは一番奥の長いソファに座っていた。 私たちに気付いたケイトが席を立って片手を大きく振る。
「待ってたよー!あれ、サイスも来たんだ!」 「こいつに無理矢理連れてこられたんだよ」 「へぇー?」 「その顔腹立つからやめろ」
ニヤニヤしながらサイスさんを見るケイトに、クイーンさんがケイトを注意する。それを苦笑しながら眺めていたら、誰かに肩を叩かれた。
「ここに座るといい」 「あ、ありがとう、セブン」 「飲み物は何がいい?」 「えっ」 「今日はメイの歓迎会だからな。遠慮するな」
セブンはそう言って微笑む。改めて言われるとなんだかくすぐったい。 私は頬が緩むのを感じながら「じゃあ」とアイスカフェを頼んだ。それに頷いたセブンはサイスさんにも同じことを言う。サイスさんはしぶしぶクイーンさんの隣に座りながら「なんでもいい」と言った。
「なんでもいい、じゃわからないんだが…」 「あー…じゃあめんどくせぇからメイと同じのでいいよ」 「うふふ〜」 「…なんだよシンク」 「メイっちとオソロだなぁと思って〜」 「なっ、好きでオソロにしたわけじゃねぇ!考えんのがめんどくさかっただけで、ていうか飲み物にオソロもクソもあるか!」 「サイス、静かになさい!シンクもケイトも人をからかうんじゃありません!」 「そうですよ、喧嘩はよくないです!」
クイーンさんとデュースさんにたしなめられ、サイスさんは不機嫌そうに腕を組む。ケイトもシンクも二人に叱られたからか、肩を竦めていた。仲が良いなぁと他人事のように思っていたら、クイーンさんが私に視線を向ける。
「喧しくてすみません」 「え、全然喧しくなんてないよ!むしろ羨ましいなって」 「羨ましい?」
クイーンさんは目を丸くする。まさかそう言われるとは思わなかったのだろう。
「や、なんていうか、今までこういうの体験したことなかったから」 「…あの、よろしければメイさんの生い立ちを聞いてもいいでしょうか?」 「うん、いいよー」 「メイ、持ってきたぞ。ほら、サイスも」 「ありがとう、セブン」 「サンキュー」
セブンが2つのグラスを私とサイスさんの前に置く。セブンが私の隣に座ったあと、レムさんがいないことに気付いた。
「そういえば、レムさんは?」 「あぁ、遅れてくるって。部屋に本置いてくるって言ってたけど」 「…そっか」 「ではレムが来てから乾杯しましょうか」 「そうですね」
レムさん、大丈夫だろうか。人知れず病気と闘っていることは私しか知らない。皆には知らさないでと言われてるからには漏らすことはしないけれど、言及しないだけで多分みんな薄々気付いてるだろう。皆、レムさんから言ってくれるのを待ってるんだと思うとやりきれない気持ちでいっぱいだった。 とにかく心を落ち着かせようとグラスに手を伸ばす。すると、聞き慣れた声が耳に入った。
「えーとぉ、僕はスパゲッティ!」 「俺は焼き肉定食だコラァ!」 「お前ら喧しいぞ。静かにしろ」 「では私は焼き魚定食で」 「じゃあ僕は親子丼にしようかな」 「皆決まったか?頼んでくるぞ」
声のしたほうに顔を向けると、0組の男子メンバーの姿が目に入る。私たちとは少し距離は空いているが、同じソファに座っていた。いつの間にいたのかと凝視していると、私の視線に気付いたジャックがにっこり笑って手を振る。 どう反応していいかわからず顔を引きつらせていたらケイトが声をあげた。
「あー!あんたらいつの間に忍び込んだのよ?!」 「忍び込んだって…ここが空いてたから普通に座っただけじゃないか」 「せっかく女子だけで楽しもうと思ったのにー!」 「いやいやぁ、僕らのことは気にしないで、女子は女子で楽しんでていいよぉ」 「普通に気にするっつーの!」 「ま、まぁまぁ、ケイトさん落ち着いて…」
憤慨するケイトをデュースさんが宥める。確かに男子は男子で料理を頼んでるし、こちらの邪魔はしなさそうだが、如何せん距離が近い。気にしないでというほうが無理な話だ。そして気にしないでと言ったジャックは確実に聞き耳をたてるはず。 それにしても偶然にしてはタイミングがいいというかなんというか。そう思っていたのは私だけではないようで、セブンが首を傾げながらキングに話しかけた。
「キングたちは私たちがいるの知っていたのか?」 「いや、単なる偶然だ」 「僕とトレイで皆を誘ったんだ」 「そうなのか…」 「いやぁ、まさかメイたちもいるなんて思わなかったよぉー、ねっ、ナイン!」 「んあ?あぁ…つかリフレに行かないかって誘われたときお前が一番張り切ってたじゃねぇか」 「だってーお腹減ってたし、エイトがメイたちがリフレに集まるって言ってたからさぁ」 「清清しいほど前言と矛盾してますね」
トレイは呆れたように溜め息を吐いた。私たちがリフレに集まることを知っていたくせに、いるとは思わなかったなんて白白しいにもほどがある。 ジャックの言葉を聞いたケイトが注文を頼んでいるエイトを睨み付けながら口を開いた。
「なるほど、エイトが盗み聞きしてたとはね…!」 「いやいや、エイトが盗み聞きしてなくてもエースとトレイが誘ったんだから、結局リフレに来てたよ」
そう言うとケイトは口を尖らせて勢いよくソファの背もたれに体を預ける。リフレに来たのは仕方ないにしても同じ席に座らなくてもよかっただろう。まぁジャックが強引に座ったのかもしれないし、それか案外エースがあそこ空いてるしいいんじゃないか、と言った可能性もあるけれど。
「まぁ、いいじゃないですか。人数は多いほうが楽しいですし」 「うっ…た、確かにそうだけどさっ」 「そもそもケイトはなんで女子だけでやろうと思ったんだよ」 「えっ、そりゃあメイにジャックとのこと聞きたいからに…」 「わ、私レムさん迎えに行ってこようっと!セブンちょっとごめんね」 「あ、あぁ…」
ケイトの発言に危機感を感じた私は、逃げるように席を立ちセブンを避けてその場を後にする。そんな私の背中から、サイスさんの「逃げたな」と呟きにも似た声を耳にしたあと、魔法陣で女子寮に向かった。
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