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墓参りした翌日も0組の教室に足を運ぶ。今日から通常授業が行われるらしい。とは言っても0組には指揮隊長がいないのに、どう授業をするというのだろう。モーグリがする、のか?いやまさかね。そんなことを思いながら教室に続く扉を開けた。
「あ、メイおっはよー!」 「おはよ、ケイト」
教室の扉を開けるとケイトが真っ先に気付き挨拶してくれる。そのあと、私に気付いたシンクが駆け寄ってきて腕に絡んできた。
「メイっちおはよう〜!」 「おはようシンク」
そう返すとシンクはニッコリ笑みを浮かべる。かわいいなぁ、と思っていたら、反対の腕に誰かが絡んできた。 誰だろうと顔を向けると、ジャックの姿が目に入り思わずギョッとしてしまった。
「メイ、おはよー!朝迎えに行ったのになんで居なかったのさぁ」 「え?朝迎えに来たの?ごめん、牧場に行ってたんだよね」 「なぁんだ、それならそうと言ってよねー」 「…ていうか離してくれない?」
シンクとジャックに挟まれ身動きが取れない。ぎゅうっと力を入れるシンクに、負けじとジャックまでぎゅうっと力を入れてくる。
「ほらぁ、メイっちが嫌がってるでしょ〜。ジャックン離してあげなよ〜」 「いやいやぁ、シンクのほうこそ離してあげなよー。メイが困ってるじゃーん」
お互いニコニコと笑みを浮かべているが目は全く笑っていない。拘束されてる人みたいだと溜め息を吐いたら、トレイがジャックとシンクを呼ぶ声が聞こえた。声のしたほうに顔を向けると、険しい顔をしたトレイが腕を組んで仁王立ちしていて、それを見たジャックとシンクは、パッと私の腕を解放してくれた。 取り敢えず解放されて一息吐く。トレイの威圧に苦笑いしていたシンクが、何かを思い出したかのように「あ」と声をあげた。
「そういえば、メイっちは授業のときどこに座るの〜?」 「それなら僕の隣に座るといいよー。ちょうど誰も座ってないし」 「ジャックの隣は遠慮しとく」 「えぇ!?」 「あはは〜そりゃあそうでしょ〜」
「だって変なことされるかもしれないしね〜」と平然と言うシンクに、「へ、変なこと…?!」とデュースさんがあからさまに反応する。顔を赤くさせるデュースさんに、一体何を考えたのかと突っ込みたくなった。 ケタケタ笑うシンクにジャックはガックリと肩を落とし項垂れる。変なこと云々もそうだけど、ジャックの隣になったらきっと授業どころではないだろう。何より私の気がもたない。
「じゃあどこに座るのよ?」 「うーん…ジャックの近く以外ならどこでもいいかなー」 「そんなに僕の近く嫌なの…?」 「え、いや、そういうわけじゃないけど、ほ、ほら、授業のときジャックが近くにいるとなんか気が散るし」 「………」 「………」 「…?なんで皆黙るの?」
周りにいる皆がポカンとした顔で私を見つめていた。ジャックまでポカンとしていて、何か変なこと言ったのかとさっきの自分の言動を思い出す。ハッと気付いたときにはもう遅く、ケイトがニヤニヤしながら肘で私をつついてきた。
「以前のメイはジャックなんていてもいなくてもいいって感じだったのに、今はジャックが近くにいると気が散るってどういう心境の変化なのよ」 「ちが、今のは…!」 「気が散るってことは〜、ジャックンが近くにいると落ち着かないってことだよね〜?」 「だからそういう意味じゃなくて…!」 「じゃあ、どういう意味なのー?」
とどめを刺すように言うジャックの顔は、まるで意地悪を楽しんでいるような笑みを浮かべていた。このやろう、とジャックを睨むが全く効かず、顔に熱が集まるのを感じながら口を開いた。
「ふ、深い意味はない!」 「ふーん?」 「本当だって!」 「うんうん、大丈夫、照れ隠しだって僕にはわかるからー」 「ジャックはもう黙ってて!」 「お前らもうその辺にしておけ」
羞恥心でどうにかなりそうなところに、ちょうどキングが割って入る。キングの少し後ろにいるセブンとちょうど目が合った。助かったと思っていたらセブンの口元が少し上がったのを私は見逃さなかった。
「シンク、ジャック、それにケイト。トレイがお呼びだぞ」 「え、なんでアタシまで?!」 「ねぇ、トレイの顔が般若に見えるのはシンクちゃんの気のせいかなぁ〜?」 「残念ながら気のせいじゃないみたいー。取り敢えず、ここは逃げるが勝ち、だよねー!」 「あなたたち今日という今日は逃がしませんよ!」 「「ぎゃー!出たぁー!!」」
シンクとジャックの叫び声を聞きながら、私はホッと安堵の息を吐いた。
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