201




 皇国兵とヘルダイバーを倒し終えると、どこからか声が聞こえた。


「生きて帰すわけにはいかん!ミリテス帝室の名にかけて!!」


 その声と共にまた新たなヘルダイバーが現れる。ここまで何台ものヘルダイバーを倒してきたからか、攻撃パターンはほとんど読めていた。マシンガンを撃つヘルダイバーと、私たちに近距離で攻撃を仕掛けてくるヘルダイバーに、瞬時に対応する。
 私たちとは離れたところにいるヘルダイバーに対し、ケイト、キング、トレイが総攻撃し、近接で攻撃してくるヘルダイバーには近距離攻撃組が総攻撃をかけた。
 離れたところのヘルダイバーが倒れ、そのすぐ後に私たちの相手をしていたヘルダイバーも崩れ落ちる。


「ミリテス帝室……ばんざぁーい!」


 皇国軍将校のエーリッヒによる最後の雄叫びが辺りに響いた。

 追加任務と射出口を破壊し終えた私たちは本来の任務である、巨大砲の破壊へと向かう。来た道を戻り、皇国軍野戦重砲陣地に入るとカスミ武官とモーグリから連絡が入った。


『司令部も被弾し始めているわ。砲台の停止を急いで!』
『2組が飛行型魔導アーマーとの戦闘を始めたクポ!そこから先は援護できないクポ!0組だけの力で、砲台を停止するクポ!』


 モーグリからの通信が切れ、走り出すと共にあちらこちらの戦場から次々と通信が入ってくる。


『こちら01混成中隊、飛行型に…!?ぎゃぁー!!』
『第01混成中隊の全滅を確認。これで混成4部隊は全滅』
『まだいやがったのか!』
『んだてめぇ!』
『なめんじゃねぇ!邪魔させるか!!』
『左翼に展開していた第08混成中隊が全滅』


 全滅の言葉に顔を歪めながらも、私たちは息をつく間もなく野戦重砲陣地を駆け抜けた。

 皇国軍砲兵隊機関区に入る。そこには砲台の動力となる装置と、それを守るように魔導アーマー・コロッサスが目に入った。


『任務クポ!皇国軍魔導アーマー部隊を殲滅し、砲台動力炉を停止させるクポ!』


 モーグリの通信に一斉に走り出す。コロッサスが左腕をあげてミサイルを撃ってきた。それを難なくかわし、柵を飛び越えコロッサスに飛び込む。ケイトの静止弾がコロッサスに直撃し、敵が一時ストップ状態のところを一気に畳み掛けた。
 コロッサスの機内にいる皇国兵のファントマを抜き、魔導アーマーが爆発する。ふとケイトを見ると私の視線に気付いたケイトは、どうだと言わんばかりの表情で口を開いた。


「ふふん、アタシの技どうよ?」


 その顔を何故か懐かしく感じた私は思わず頬が緩む。どこかで見たような、聞いたような気がして、ケイトの台詞に頷きながら正直に思ったことを口にした。


「羨ましい」
「へ?」
「私はケイトみたいに魔法銃使えないからさ。羨ましいし格好いいよ」
「そ、そう?格好いいなんて初めて言われたわ…なんか照れちゃうじゃない!」


 そう言いながらケイトは私の背中を思いっきり叩く。容赦なく叩くケイトに私は顔を引きつらせた。
 コロッサスを倒しても、次のコロッサスが現れる。ヘルダイバーよりもコロッサスのほうが今まで何回も戦闘してるお陰もあり、倒すのは容易だった。四体目のコロッサスを撃破すると、暫しの休息が与えられる。


「終わりか?」
「…でもモーグリからの連絡はないぞ」
「ねぇ、なんかウィーンって変な音してない?」


 ジャックの言葉に、皆は確かにと顔を見合わせる。このエリア内の音には間違いない。ふとコロッサスが現れた場所を見てみると、コロッサスのときと同様に何かが上がってきた。私たちは武器を構え凝視する。そしてそこから現れたのは皇国兵と皇国軍大佐だった。


「こいつら倒せば終わりっぽいねぇ」
「皆、行くぞ!」
「さっさと終わらせちゃお〜!」


 お互い掛け声をかけながら敵に向かっていく。私も皆に遅れを取らないように走り出した。

 皇国兵と大佐を難なく倒し終えたあと、巨大砲の存在も忘れずに破壊する。そこへカスミ武官から連絡が入った。


『皇国巨大砲台の破壊を確認、ミッション終了よ。作戦発動は近いわ。危険地域より急ぎ帰投して』
『ビックブリッジに撤退用の飛空艇を向かわせたクポ!セツナ卿の召喚詠唱が完了する前にビックブリッジまで撤退するクポ!』


 時間にして詠唱完了まで約8分らしく、それまでに撤退しなければ巻き添えを食らうことになる。セツナ卿の名前に、私は脳裏にクラサメ隊長の後ろ姿が浮かんだ。クラサメ隊長はどうなってしまうのだろう。
 そんな一抹の不安を胸に、先を行く0組の後ろを追いかけた。



*     *     *



「ここはどこだ?予は誰だ?」


 ビックブリッジに大柄の男が突如現れ、辺りを見渡し呟く。頑丈な躯に頑丈な鎧を身に纏うその姿は玄武の兵そのものだった。足元には白虎の魔導アーマーが無惨に横たわっている。


「知らぬ。わからぬ。わからねぇ!!!」


 自問自答するように呟き、そして身震いをした。


「感じるぜ…奪い、貪り、喰い尽くすんだってなぁ!!」


 その言葉と同時に躯から大きな剣と共に、異常な程のエネルギーが辺りを包んだ。