ありがとう、世界



 メイは自室でジャックと談笑していた。今日は任務も講義もなく、お互い休暇が合ったからだ。メイは椅子に腰をかけ、ジャックはベッドに座りながら昨日の出来事を楽しそうに話す。

「それでね、クイーンがナインに突っ込むとナインてば口をこんな風に尖らせて、今それを言いたかったんだっつーのって呟いてたの聞こえてさぁ。盛大に吹き出しちゃったよぉ」
「ふふふ、そうなんだ」

 楽しそうに話すジャックに、メイは笑みを浮かべながら相槌をする。そんなメイとの時間がジャックは何より大事だった。
 一通り話終わるとジャックは不意にメイを手招きする。メイは首を傾げながら腰をあげてジャックの側に行き、ジャックの目の前に行くとおもむろにメイを自分に引き寄せた。

「わっ」
「メイー」

 ジャックの股の間にメイが入る形で抱き締められる。驚きながらも微笑みを浮かべるメイに、ジャックは満足げに笑った。ぎゅうぎゅう抱き締めるジャックにメイは苦笑する。

「ジャック、苦しいよ」
「えへへーごめーん」

 悪びれることなく言うジャックにメイは小さく肩を落とした。そしてやることもないからとジャックの髪の毛を触る。少しだけワックスがついている髪の毛をメイは弄び始めた。
 ジャックはクスクス笑いながら口を開く。

「メイーくすぐったいよぉー」
「ごめーん」
「もぉー僕の真似するなあー!」
「うわわ!?」

 メイを抱き締めたままジャックは後ろへ倒れる。メイは抵抗できずジャックの上に乗った状態になった。ジャックはメイの胸に顔を埋める。

「ちょ、ジャック!」
「あーしあわせぇー」
「変態!」

 ジャックの頭を軽く叩くとジャックはだらしない顔のまま顔をあげる。そんなジャックを見て、メイはプッと吹き出した。

「なんで笑うのさぁ」
「かわいいなぁって」
「かわいい?僕が?」
「うん。かわいい」

 そう言うメイにジャックは頬を膨らまして、何か思い付いたのかニヤリと笑う。嫌な予感がしたメイはジャックから退くために身体を起こそうとするが全く身動きがとれなかった。
 ジャックはメイの身体を抱き締めたまま右に回転し、今度はジャックが上、メイが下になる。顔を引きつらせるメイにジャックは不敵な笑みを浮かべた。

「かわいいなんて、僕には合わないよぉ」
「え?な、なん」

 言いかけのメイの口をジャックが塞ぐ。目を見開くメイに、ジャックは間髪入れずに舌を入れた。生暖かい感触にメイはカッと頭に血が上り、恥ずかしさに目を思いっきり瞑る。絡ませようとしてくるのを必死に逃げるが、逃げ切れるはずもなく簡単に捕まってしまった。

「んんっ…」

 思わず声が漏れるメイに、ジャックは角度を変えながら、弄ぶように何度も舌を絡ませる。羞恥心で身体が熱くなりジャックの背中側の服を強く掴むと、ジャックがピクリと反応し、ゆっくり唇を離した。そしてメイの額に自分の額をぴたりとくっつける。

「…顔真っ赤ぁ」
「……だ、だって」
「僕、メイに会えて本当に良かった」

 鼻と鼻をくっつけてジャックは柔らかく微笑む。メイは顔に熱が集まるのを感じながらも、ジャックに応えるように精一杯笑みを作った。

「私も、ジャックに会えて本当に良かった」
「へへ…この世界に感謝しなきゃ、ね」

 そう言うとジャックは再びメイの口にキスを落とした。

(僕たちを巡り合わせてくれて、ありがとう)

(2014/01/02)