198.5
メイが手を離すと同時に距離を置かれてしまったジャックは、自分から離れていくメイの背中を見つめる。恥ずかしがり屋だなぁ、と思いながら頭の後ろで手を組むとシンクがにこにこしながら近付いてきた。
「ジャックん残念だったねぇ〜」 「ほんとにねー。メイってば恥ずかしがり屋さんなんだから」 「ふふふ、ジャックんってメイっちといるときが一番輝いて見えるよぉ〜」 「そーお?嬉しいなぁー…でもそれってメイといないときは輝いてないってことー?」 「んふふ〜」 「…あははー」
お互い笑い合うジャックとシンクにデュースは首を傾げていた。シンクは嬉しそうな顔でメイを見つめながら口を開く。
「メイっちが今日から0組って聞いてわたしすっごい嬉しくてさ〜。このミッション終わったらメイっちと食事しようかなぁ〜とか、一緒にお散歩もいいなぁ〜とか考えてて、これからが楽しみでしょうがないんだぁ」 「僕も。これからずっと一緒に居られると思うともう死ぬほど嬉しいよぉ」 「死んじゃったらメイっちと一緒に居られないじゃ〜ん」 「それくらい嬉しいってことー」
だらしなく笑うジャックに、シンクもつられて笑う。ジャックはシンクの言葉に感化されたのか、ニヤつきながら腕を組んで顎に手をあてた。
「僕はそうだなぁ、魔導院に帰ったらメイと一緒にお昼寝してーご飯も一緒に食べてー勉強教えてもらってー…」 「ちょーっと待ったぁ〜!ジャックん、メイっちとご飯食べるのはわたしが先だからね〜!」 「えー、シンクずるい!僕が先にメイと食べるんだからー!」 「ジャックんはいっつもメイっちといるんだから、こんなときくらいわたしに譲ってよね〜」
こんな言い合いのときでさえ笑顔を絶やさない二人に、メイとセブン以外の皆は呆れていた。そんな二人にトレイが咳払いをして近付いていく。トレイの咳払いにジャックとシンクは揃って肩を跳ねさせた。顔を引きつらせながらおそるおそるトレイに振り返る。トレイの顔は険しかった。
「ジャック、シンク。私たちが今何をして何を為さなければならないか、わかっているのですか?」 「そんなに眉間に皺寄せちゃって〜、カルシウム足りてないでしょ〜」 「そうだよぉ。そんな顔してたらキングみたいに顔つき悪くなっちゃうよー?」 「何か言ったか?ジャック」 「あ、あははー、なんでもアリマセン…」 「あなたたちはもっと緊張感を持つべきです!だいたいいつも言ってますがあなたたちは――」
トレイが説教モードに入ると同時に、COMMから通信が入る。その通信に、トレイは顔をしかめ、シンクとジャックはホッと安堵の息を吐いた。
『セツナ卿の召喚が発動するまで橋を守って!』 『任務クポ!セツナ卿の召喚詠唱が始まったクポ!0組は侵攻する皇国軍を殲滅するクポ!』 「トレイ、お説教はまたいつか聞くから!ほら急ごう!」 「そうそう〜、いつか、聞くからねぇ〜」 「…全くあなたたちって人は…」
ジャックとシンクは急いでトレイから離れ、メイの元へ走って行く。それを見て額に押さえて溜め息を吐くトレイに、キングが慰めるように肩を叩いた。
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