惹かれ合う魂




 見た目は自分の子供達となんら変わらない人間。違うとしたら魂くらいだ。それなのにどうして子供達はあの子と関わってしまうのだろうか。特に十の座につく子供はあの子を寵愛していた。
 最初こそ、あの子は魂を育むための障害物になりえる存在でしかなかった。しかし、何回も実験を繰り返していくうちに、あの子の存在が子供達の魂を高めていることに気が付いた。それからは子供達があの子に干渉していても切り捨てはしなかった。魂が高められるのなら、そういう手段もひとつのうちと考えたから。あの子は普通の人間で、私が手を下さぬともいつかはどこかで居なくなってしまう。クリスタルにより記憶はなくなるのだからと見守っていた。
 しかし、ひとつだけわからなかった。十の座の子供はどうしてあそこまであの子に拘るのか。他の子供達はあの子がいなくなってもすぐに乗り越えられた。それに比べ、十の座の子供はあの子が居なくなった消失感を拭うことができず、端から見たらいつも通りだったけれど、それは空元気に過ぎなかった。その様子を見かねた私は、あの子が居なくなったあとも、十の座の子供には完璧にあの子との記憶を抹消させていた。それは一回だけではなく、何回も、何回も、繰り返されていた。

「魂が魂を寵愛してるのかしら」

 もしそうだとしても、あの子の魂は私の実験には必要ない。あの子の魂は毎回リセットされているはずなのに、新しく実験を繰り返しても十の座の子供の魂とあの子の魂は出逢ってしまう。あの子の魂には何かがある。そう感じてあの子と出会う前に、あの子の魂を抜き取るよう子供達に命令したことがあったが、結局魂を抜き取ることができず、その魂は自分達の前で消えてしまったと聞いた。
 この実験に誰かが介入している。そう考えてもみたが、私たちが管理している世界で介入できる術などない。
 自ら会いに行ったことはある。あの子は見た目は人間だった。しかし、違和感は拭えなかった。人間であるはずのあの子から、まるで誰かを守るために生まれてきたような、そんな雰囲気が醸し出されていた。あの子は子供達と違って自由に選択できる。今までどんな選択をしてきたのかわからないけれど、あの子は他の人間とは違うと感じさせられた。
 あの子が何者なのか、私にはわからない。わからなくとも、魂を育む邪魔さえしなければ別にどうだっていいと思っていた。十の座の子供がここまで寵愛しなければどうでもよかったけれど、ここまで来たら解明したくもなる。

「自由に選択できる人間が、どこまで成長するのか楽しみね」

 それが子供達にとって大事な要素だとしたら、あの子を子供達の側で働かせざるをえないだろう。いつか来たるその最期の時がくるまで――。

(2013/12/28)