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ジャックに補助魔法をかけた私はクァールが飛び出してくる場所へ向かう。すると、ちょうどそこからクァールが飛び出してきた。クァールがジャックの方へ行こうとするのを立ち塞ぎ、ブリザガで行き場をなくすように辺りを凍らせる。辺りが凍ったからか、クァールの動きが止まった。私はゆっくりとクァールに近付き腰をおろす。
「ジャックは私の…大切な人なの。お願い、ジャックを攻撃しないで」
目線を合わせながら言う私に、クァールはじっと私の目を見たあと、付き従うように地面に伏せた。
――主の仰せの通りに…。
「…ありがとう。あと…その、力を貸してほしいんだけど…」
いつかクァールの声を聞いたことがあった。その声とは少し低いクァールの声が頭の中に響く。クァールも私たち人間と一緒だということを実感しながら、私はクァールの頭を撫で、顔をあげた。
クァールの件が終わるとジャックの方へ駆け出しミサイルを避けているジャックに向かってケアルガを放つ。回復魔法に気付いたジャックが、ハッとして私に振り返った。
「おかえりぃ」 「ごめんね、待たせちゃって」 「ううん、回復してくれて助かったよぉ!そういえばクァールは?」 「ちょっとね。ジャックも協力してくれる?」 「?」
首を傾げるジャックに、私はとりあえず自分達にプロテスとウォールをかける。火炎放射を放ってくる空中機動兵の攻撃をさけて、少しだけ敵から距離を置いた。そして身を隠すように障害物に潜む。
「それで、協力って?」
そう言うジャックに、私は作戦の内容を話し始める。ジャックは怪訝そうな面持ちをしていたが、作戦内容が話し終わると口元をあげて頷いた。
「その作戦たっのしそー!」 「そう?じゃあよろしくね」 「任せといて!君たちもよろしくねー」
ジャックは笑みを浮かべながらクァールたちに目を移す。ジャックが目の前にいるのに攻撃をしないクァールたちに、私はホッと胸を撫で下ろし、小刀を取り出した。
「小賢しい奴らめ…!怖じ気付いたのか!ふん、楽に殺してやるから出てこい!」 「…行ってくる」 「気を付けてねぇ!」
ジャックに頷くと私は障害物から飛び出した。アントニオ中尉は私を見つけるとすぐにミサイルを放つ。ウォールでダメージを抑え、空中機動兵の動きを見据えた。空中機動兵は左右に揺れながら、私の行動を見張っている。できるだけここに近付かせたい私は、アントニオ中尉に向かってファイアを放った。軽々と避けたアントニオ中尉は馬鹿にするように笑う。
「ふ、ははははは!なんだその炎は!魔導アーマーと比べて随分ヘボいもんだな!いや比べものにもならない!」 「…じゃ、あなたの言う魔導アーマーの炎の威力ってものを見せてくれない?」 「ハッ、生意気なガキが。あとで吠え面かくなよ!」
火炎放射を放つ空中機動兵に、私はニヤリと笑い後ろへ後ずさる。どうやら敵は私にしか眼中にないらしい。このチャンスを逃さないためにも作戦は成功させたい。 そう思いつつ火炎放射に当たらないように後ずさっていくと、背中に冷たいものが当たる。それが障害物だと気付くのに時間はかからなかった。
「終いだな。せいぜい苦しむがいい」 「…サンダー!」 「どこにやってんだ?最後の悪足掻きってやつか?」
ニヤリと笑うアントニオ中尉を尻目に真上に向かってサンダーを放つ。火炎放射の口を私に向けて放とうとした瞬間、障害物の上からクァールたちが空中機動兵に向かって襲い掛かった。不意をつかれた空中機動兵はクァールに押され、地面へと落下する。
「なっ、クァール!?どけっ、味方だろうが!くそ、気が狂いやがったか!」
空中機動兵は足掻くが、数体のクァールに押さえつけられているからか上手く動けないでいた。その時アントニオ中尉の身体に人影が映る。アントニオ中尉がハッとして上を見上げた先には既にジャックが刀を振り上げていた。
「今楽にしてあげるよっ」 「うっうああぁぁ!?」
ジャックが刀を振り落とした瞬間、何とも言えない鈍い音が耳に入り思わず顔をしかめる。魔導アーマーが爆発を起こすと、ハッと我に返り横になっている皇国兵のファントマを抜いた。
『任務成功クポ!皇国軍の指揮系統が混乱しているうちにビッグブリッジの0組と合流するクポ!』 「ほーい、メイ行こうー?」 「あ、うん…」
モーグリの通信にジャックが返事をして私を呼ぶ。私はクァールたちに振り返ると、どうすればいいのか頭を捻った。このままここに居させるのも危ないし、だからといってまた皇国へ戻るよう言うのも気が引ける。 唸る私にジャックが首を傾げながら顔を覗き込んできた。
「どうしたの?」 「ん?んー、クァールをどうしようかと…」
お利口に座っているクァールにジャックも顔を向ける。溜め息をつく私に、ジャックはきょとんとした顔で口を開いた。
「逃がせばいいんじゃない?」 「逃がす?」 「ここに居たら多分死ぬでしょー?僕ももうクァールとは戦いたくないし、ここから逃げてーて言えば逃げると思うよー」 「…そっか」
ジャックの言葉に納得した私は、クァールのほうに顔を向ける。クァールたちは小首を傾げて私を見つめていた。
「ここから逃げて……辛いこともあるかもしれないけど、生きていればきっと良いことがあるから」
クァールの目を見て言う。言い終わったあとしばらく動かなかったが、一匹が意を決したように立ち上がり走っていくと、それに続いて次々とクァールたちは私たちの元から去っていった。最後の一匹まで見送ると肩の荷が下りたようにほっと息を吐く。
「行っちゃったねぇ」 「うん…ジャック、ありがとね」 「いやいやぁ、僕は何にもしてないよ。クァールたち、無事に生き延びられるといいね」
そう言ってジャックは微笑んで、私の手を取り歩き出した。
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