また君に出会いたい




「こんなことになるなら、出会わなければよかった」

 本当はあんなことを言うつもりはありませんでした。本当はあなたのことを誰よりも愛していたけれど、それを言ってしまったらいけないような気がして、言えませんでした。臆病者だと、あなたは笑うでしょうか。
 私が言えなかったのは理由がありました。愛していると言ってしまったら、きっとあなたを苦しめてしまうでしょう。私のために無理をするでしょう。だから、言いませんでした。自分を、仲間を、一番に考えてほしかったから。
 これからもあなたに私の気持ちを伝えることはありません。例え、今ここで息絶えてしまうことになるとしても。




「メイ…!」

 血だらけに横たわるのは最愛の人で、今にも事切れそうだった。一生懸命声をかけても反応はない。唇を噛み締め、拳を強く握る。
 こんな結末しか用意されていないと知っていたなら――。

(君を愛したりなんか、しなかったのに。)

 あの日の君と同じようなことを一瞬でも考えた僕は、自分で自分を嘲笑う。あの時、抱き締めたのは、君のことが大事だったから。安心させたかったから。それはきっと君のためでもあり、自分のためだった。
 君が出会わなければよかった、と言っても、それでも僕は、また君に出会いたい。
 そう言ったら君は呆れるだろう。呆れる顔が目に浮かぶのに、何故か、その顔が徐々に霞んでいく。消えないで、と願っても叶うことはなく、ついに真っ白に染まった。

 目の前に横たわる人の姿を呆然と見つめる。ふと頬が濡れている感覚に気付いた。おそるおそる手で頬を触り、確認する。それは血ではなく、透明な、何かだった。


 とても残酷な言葉を吐きました。そんな私を責めもせず、あなたは抱き締めてくれました。あの優しい温もりを今でも、この体は覚えています。そして、これからも――。


(2013/11/26)