165.5




 ジュデッカ会戦まであと3日。
 今日は1人で久しぶりに街へ出掛けようと思ったら、偶然通りかかったレムさんに捕まってしまった。


「メイさん、どこ行くの?」
「え、えーっと、久しぶりに街に買い物に行こうと思って」
「街に?いいなぁ、…そうだ、私も着いていっていいかな?」
「えっ」


 レムさんはそれはもう目を輝かせて私を見つめる。その眼差しは私が断れないのをわかっているかのようだった。
 たじたじになる私に、レムさんは小首を傾げてダメ?と呟く。ダメ、なんて言えるわけがないじゃないか。


「れ、レムさんが良ければ…」
「わ、本当?やったぁ!ありがとう、メイさん!」
「いえいえ」


 子どものようにはしゃぐレムさんに、私は頬が緩む。うん、なんかいいなぁこういうの。
 そう感じながらレムさんを見つめていたら、レムさんは何かを思い付いたかのように声を上げた。


「どうせなら0組の子たちも誘おう!ね、メイさん、そうしましょ!」
「えぇ!?」
「ダメ、だった…?」
「いえ全然大歓迎です」


 もうレムさんに勝てまいと私は肩を落としながらそう言うとレムさんはパアッと顔を明るくさせて、私の腕を引っ張り0組の教室へと向かった。

 0組の教室に入ると0組の子たちは一斉に視線を私たちに向ける。いち早く気付いたのはシンクで、嬉しそうに声をあげて駆け寄ってきた。


「メイっちだぁ〜!」
「ど、どうも」
「珍しいねぇ、メイっちが0組に来るなんて〜」


 来るというか強制的に連れてこられたのだけど、それを口には出さずに苦笑いを浮かべる。レムさんはシンクに、今からメイさんと買い物行くんだけど一緒にどう?と声をかけた。シンクはそれを聞いて目を丸くさせたが、すぐに笑顔になって行く行く〜!と私の腕に自身の腕を絡めて言った。


「じゃあ決まりだね!」
「あ、アタシも参加するー!デュースは?」


 ケイトが右手を挙げながら駆け寄る。ケイトはデュースさんに声をかけるとデュースさんはもじもじとしながら口を開いた。


「あ、あのわたしも、その、行きたいです!」


 恥ずかしそうに言うデュースさんに、レムさんが嬉しそうにもちろん!と頷いた。デュースさんは照れ笑いを浮かべながら、ありがとうございます、とお礼を言う。
 そんな中、サイスさんが鼻で笑ってくだらねぇ、と呟いたのが耳に入った。それを聞いていたのかレムさんが控えめにサイスさんに向かって声をかける。


「サイスは行く?」
「行かねぇよ、みっともない」
「サイスっち行かないの〜?」
「…あ、じゃあサイスさんには何かお土産買ってくるね」
「…は?」
「だってさ、良かったじゃん」


 行きたくない人を無理矢理連れて行くわけにもいかないし、だからといって何食わぬ顔で買い物にも行きたくない。お土産、という形になってしまうがサイスさんを仲間外れにするわけにはいかないと思った。だからそう口にしたんだが、サイスさんは酷く顔を歪ませて私を凝視した。


「い、いらねぇよ!」
「またまた〜、少し嬉しいくせに〜」
「うるせぇ!」
「セブンとクイーンはどうするー?」


 シンクとサイスさんの言い合いをスルーしながらケイトがセブンとクイーンさんに声をかける。クイーンさんは眉を八の字にさせて「わたくしは調べることがあるので今回は遠慮しておきます」と言った。「じゃあクイーンさんにも何かお土産買ってくるね!」と言うとクイーンさんは微笑みを浮かべて「ありがとうございます」とお礼を口にした。


「メイはいいのか?」
「ん?」


 顔を横に向ければセブンが申し訳なさそうな顔をして立っていた。私はいいのかって、まぁこうなった以上は仕方がない。


「私は全然いいよ。大勢で行ったほうが楽しそうだし…セブンもどう?」
「…メイが良いなら」
「じゃあ一緒に行こう」


 そう言うとセブンは少しだけ笑って頷いた。
 ふと視線を感じて顔をそっちに向ければ、ジャックとバチッと目が合った。ジャックの顔を見て頬が熱くなるのを感じながら逃げるように目を逸らした。

 こうして私たちはサイスさんとクイーンさんを残し0組を後にした私たちは魔導院を出て、街へと繰り出した。



「…なんだったんだ、今の」
「さぁ…」
「………」
「ジャック?」
「え?あ、い、いいなぁ、僕もメイと買い物に行きたかったなぁ!」
「…ペン、折れてるぞ」
「えっ?!わ、本当だ!」
「何か動揺するようなことあったんですか?」
「べっ別に!?なんでもないよー!」
(((…おかしい)))