15




 結局ジャックが話した内容を話さないままセブンと別れた。セブンはどうやらドクター・アレシアに呼ばれたらしい。
 私はセブンと別れた後もリフレッシュルームで寛いでいた。久しぶりに過ごす1人の時間に、なんとなく寂しさを覚えた。


──ピピッ


「?」


 無線が入る。また任務だろうか、そう思いながら無線を繋いだ。


『よぉ!』
「………」


 無線をしてきた人物は言わずもがなナギであった。任務なのか、と問うと返ってきた答えはノー。じゃあなんなのかと聞くと、サロンに来い、と一言言って無線は切れた。ちょっと待て、なんでサロンなんかに、と言い返す前に切れてしまった無線に少し苛立ちを覚えながら私はマスターにお礼を言って席を立った。

 サロンに着くと、こっちこっち、とナギの声がした。ナギの声のしたほうに顔を向けると、ナギと朱のマントが目に入った。女の子のほうは私を見るなり、あ、と小さく呟いたのがわかる。ナギの方に歩いていくと女の子が驚いた様子で口を開いた。


「あなたはあの時の…」
「あぁ?なんだデュース、知り合いか?」
「あ、はい」
「お、そうなのか?」
「うん、まぁ…あの時はどうも、デュースさん」
「あ、いえ!」


 もう1人の男の子はなんだか怪訝な面持ちでこちらを見ている。ナギはあぁ、と声を上げていきなり私の肩を抱いた。


「は、ちょ」
「こいつ、メイって言うんだ。俺のかのじ」


 ナギまで何かくだらないことを言いそうだったので、肘を鳩尾に思いっきり打ち付ける。それによりナギはうっ、という呻き声と共に崩れ落ちた。
 唖然としている2人に、改めて自己紹介をする。


「今こいつから聞いたと思うけど、メイて言います。デュースさんはこの間会ったからわかるか」
「あ、はい」
「キミ、は初めましてだね」
「お、おぉ…」
「名前は?」
「……ナインだコラァ」


 ナイン、私は頭の中で記録する。この子は確か槍を振り回していた子だったような、そんな映像が頭の中で再生された。ナインくん、と呼ぶと君づけは慣れねぇからやめろ、と言われたので呼び捨てにすることになった。


「…てぇ…ちょ、ちょっとした冗談じゃねぇか…」
「冗談でも言っていいこと悪いことあるでしょ」
「マジ容赦ねぇな…それにしても鳩尾に肘打ちはいてぇっつの…」


 鳩尾を抑えてフラフラなナギに2人は少し同情しているようだった。私はナギに向き直り手を貸す。流石にやり過ぎたかなと思ったからの行動だけど。ナギは私の手を取るとあー痛かったと苦笑いをした。


「…で、用はこれだけ?」
「いや、まぁ…そうだけどよ」
「?まだなんかあるの?」
「いや、」


 頬をかくナギに首を傾げる。すると急にデュースさんが私に話しかけてきた。


「あの、」
「…ん?」
「メイさんは…ジャックさんとどのような関係なんですか?」
「え」


 思わずデュースさんを凝視してしまう。
 私とジャックの関係?いや、そんな普通に友達?だと思うけど。そう答える前に何故かナインが反応した。


「は?おいデュース、どういうことだよ」
「あ、先日ジャックさんとメイさんを見かけたとき、少し気になることがありましたので…」
「気になることだぁ?」


 ナインはデュースさんを見る。気になること、とはなんだろう。私も気になるが取り合えず私とジャックはなんの関係もないとデュースさんに言う。
 デュースさんはそうですか、とまだ少し納得いかないような感じだった。


「デュースさんが気になることって、なに?」
「あ、いえ、大したことじゃないので」
「俺も気になるじゃねぇか」
「えぇ、と」
「おいおい、俺を置いてくなよ」


 私と2人の間にナギが割って入る。そしてナギは私の手を掴んで魔法陣のほうへいきなり歩き出した。さりげなさ過ぎるナギの行動に私は呆然とする。


「え、え、ナギ?」
「じゃあな、お二人さん!また会ったときはよろしくー」
「え、あ、はい…」
「おいデュースそれで気になることってどういう」


 ナインがまだデュースさんに問い詰めているところで私とナギはサロンを後にした。あのあとデュースさんはナインに話したのだろうか、ナギに手を引かれながら気になることってなんだろうと気になる私だった。
 それよりもナギはどこへ向かうのだろうか。