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今回の任務は残念ながら失敗に終わってしまったが、0組や私も無事に帰ってこれたので良しとしよう。 あれからジャックと共に(というか勝手に着いて来たのだが)魔導院に戻り私の部屋で何故か一緒に報告書を書いていた。当たり前のようにいるジャックを見て、溜め息が洩れる。
「んー?どしたのー?」 「…別に、何でもない」
もう突っ込むのも疲れてしまったのでそのまま放っておくことにした。ジャックは鼻歌を歌いながら上機嫌な様子で、思わず頬が緩む。 報告書を書き終えた私は背伸びをして、未だ報告書を書いているジャックを頬杖をつきながら見つめていると、ふとトキトさんが言っていたことを思い出した。
「ねぇ、ジャック」 「なーにー?」 「ダイヤの原石は手に入ったの?」 「あ、トキトから聞いたぁ?」 「うん」
ダイヤの原石をトキトさんが欲しがっていて、それをジャックとナギが取りに行ったと聞き少し心配はしていた。ジャックとナギとはあの日から一度も会わなかったから。 本人はこうしてピンピンしているからよかったものの、滅多に手に入らないダイヤの原石を本当に手に入れたのか不思議に思った。 私がそう問い掛けたあと、ジャックは筆を置いてにっこり笑って口を開いた。
「もち手に入れたよぉ」 「へぇ、すごいね」 「でしょでしょ?もっと褒めてー」 「はいはい」
にこにこ笑って言うジャックに私は苦笑を浮かべる。早く書きなよ、と催促すれば流さないでよねぇ、と口を尖らせながら筆を手に取った。 もうすぐ書き上がりそうな様子を見て席を立ち、自室にある冷蔵庫からジュースを取り出してコップに注ぐ。そうしているうちにジャックがうーん、と背伸びしている姿が目に入った。
「終わったー!」 「お疲れさま、ジュース飲む?」 「うん!飲む飲むー!」
目を輝かせて私に振り返るジャックは、小さな子どものように見えて仕方なかった。コップ2つを机の上に置き、1つをジャックの目の前に差し出す。ジャックはありがとう、とお礼を言いながらコップに口をつけた。
「っはぁー!仕事の後の一杯は最高だねぇ」 「何それ、親父くさい」 「えー、僕まだピチピチの16歳なのにぃ」
ピチピチの16歳と聞いてまだ16歳だったっけ、と呟くとジャックは思い出したかのように声をあげた。
「そういえば、今月の17日で17歳になるよー!」 「今月なんだ、誕生日」 「うん!だからさぁ、なんかプレゼント、欲しいなぁ…」
私をじぃっと見つめるジャックに、えぇ、と眉を寄せる。 そんな17日なんてあっという間じゃないか、それまでにプレゼントを用意しとけだなんて欲張りだな。まぁでもジャックには色々とお世話になってるから、そういう意味でのプレゼントもありかもしれない。 そう思いながらも私は考えておくね、とだけ返事をした。その返事に落胆するかと思ったが逆にへへへ、と照れ笑いを浮かべていた。
「駄目元でも言ってみるもんだねぇ」 「駄目元だったの?」 「うーん、ちょっとした賭けってやつかなぁ」 「ふーん…いらないならいいけど」 「えっ!?そんなぁ、メイからもらうものだったら何でも嬉しいよー!だから楽しみにしてるね!」
もう本人はもらう気満々だ。しょうがないな、と呆れる私にジャックは楽しみだなぁ、とにこにこ楽しそうに笑っていてなんだか妙にプレッシャーを感じてしまった。 どんなのにしようかなぁ、なんて考えてる辺り私もあげる気があるらしく自分で自分を笑う。
「………」 「……ジャック?」
急に黙り込んだジャックを覗き込むと、何故か真剣な表情をしていた。その顔は若干赤くなっている。 黙ったまま席を立ったジャックは私の前に立つ。何がしたいんだ、と首を傾げてジャックを見上げた。 黙るジャックなんて滅多にないなぁ、なんて思いながら見つめているとジャックの両手がおもむろに私の頬を優しく挟み込んだ。ジャックの大きくて暖かい手に心臓がドクン、と大きく跳ねる。
「メイ…」 「え、」
小さく私の名前を呼んだと思ったらジャックの顔が徐々に近付いてきているのに気付いて、突き飛ばそうにも何故か身体が硬直して動けない。心臓が大きく脈を打っているのがわかる。顔にも段々と熱が集まるのも感じる。それなのに身体は全く言うことを聞いてくれなかった。 ジャックの息が小さく私の唇に当たったその時、私は我慢できずギュッと目を瞑った。
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