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 広場に降り立つとちょうどコロッサスの真後ろだったので、不意を突いて魔法を繰り出した。火花をあげて壊れるコロッサスに、戦っていた6人が一斉に顔を向ける。


「メイ!」
「なんで…」
「上からの命令で援護しに来ました」
「…ハッ、ナメられたもんだな」


 鼻で笑うサイスさんに私は苦笑を溢す。そんな中、コロッサスやウォーリアの攻撃を避けながらジャックが勢いよく私に駆け寄ってきた。


「メイー!会いたかったよぉー!」
「うん、ジャック、後ろ危ないから」


 ジャックの後ろから突進してくるウォーリアに向かってサンダーを放つ。ジャックの横腹ギリギリにサンダーの稲妻が走り、ジャックは身体を硬直させる。後ろでウォーリアの爆発音がすると、ジャックは顔を引きつらせた。


「いっいきなりやめてってば!」
「ごめんごめん…とにかく話は後でね」


 そう言うと自分のすぐ後ろにいた皇国兵に武器を突き付ける。ジャック以外の他の0組はそれぞれ戦いに集中していた。
 ジャックもまた、襲い掛かってくる皇国兵を自身の刀で攻撃をする。それを見ながら隙あらばプロテスやケアルを唱えて0組に補助魔法をかけた。


「足止めだ!とにかく足止めするんだ!」
「朱のヤツらに目にものを見せてくれる!」
「なりふり構うな!まとめてかかれ!」
「ここが正念場だ!気を抜くな!」


 ところどころで皇国兵たちが声をあげて士気を高めている。フェイス大佐という男はそれほどの価値なのか、部下に余程信頼されているらしい。
 そう考えてクラサメ隊長が脳裏を過った。クラサメ隊長も、なんだかんだ言って0組のことを信頼しているんだ。


「ちょっと、これキリがないっつーの!」
「確かに…とにかくこの猛攻に耐えなきゃオレたちが殺られるのは確実だ」


 ケイトが嘆くように声をあげ、それをエイトが冷静に返す。声をあげることができるならまだ大丈夫だろう、そんなことを思いながらケイトとエイトにケアルをかけた。
 ふとエイトと目が合うとほんの少しだけ笑ったような気がした。


「メイ、ありがと!」


 ケイトは皇国兵に魔法銃を突き付けながら声をあげてお礼を言う。わざわざお礼なんか良いのに、と思ったがやっぱりお礼を言われるとやる気に繋がるし嬉しいもので、自然と頬が緩む。


「随分余裕だな」
「!さ、サイスさん…」


 トン、と背中に人の温もりを感じると同時にサイスさんの声が耳に届く。
 随分余裕だな、なんてこれでも結構いっぱいいっぱいなんだけど、と思いながら全然余裕じゃないです、とだけ返しておいた。それを聞いたサイスさんは鼻で笑う。


「あんたもお人好しだね」
「えっ」
「こんなヤツら、あたしらだけでも余裕なのにさ」


 そう言いながらサイスさんは自身の武器で皇国兵やウォーリアに向かって攻撃する。皇国兵の呻き声と機械の壊れる音を聞きながら、私はケアルを唱え自身とサイスさんの身体を癒した。


「私はただ手助けがしたかっただけです」
「堅ぇ」
「……手助けがしたかった、の」


 サイスさんの冷たいその一言に怯んだが、もう一度言い直す。するとサイスさんは喉を鳴らすように笑った。


「危険を犯してまで助けるなんてどうかしてんな」
「…そうかも。でも0組は大事な仲間だから」


 そう言ったあと、自分で言ったくせに何故か恥ずかしさが込み上げてきた。それを悟られぬように私はプロテスをサイスさんと自分にかけて、コロッサスに向かって突っ込んだ。





「大事な仲間、か」


 そう呟くと、自然と口許があがる。
 そして銃を乱射してくる皇国兵に向かって自身の武器でトドメを刺した。