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 しばらく時間が経つとフェイス大佐は攻撃を止め、移動をし始めた。時間を稼ぐためだろう。
 私はフェイス大佐を追いながら自身のCOMMをエイトのCOMMに繋げる。


「目標は町の東部を移動中、敵影を捕捉。ガイドマップにデータを送信したから確認して」
『了解』
『エイトばっかりズルーい!僕もメイと話したいのにー!』
『うわっ!や、やめろって、ジャック!』
『…ジャック、任務中は大人しくしてろ。大人しくできないのなら』
『ご、ごめんなさい…』
『全く本当にしょうがないんだから』
『呆れて物も言えねぇな』
「…………」


 一体どういう状況なのか気になるくらいのやり取りだ。恐らくキングはジャックの世話役として着いてきたのだろう。ご愁傷さまです、と心の中でキングに同情する。

 フェイス大佐は各地の市街地を点々としながら、今度はニシキギ橋にて0組と対峙した。


「しばらく付き合ってもらいます!」


 そう言うとフェイス大佐はミサイルを発射させた。周りの建物が崩れていくのを見て、ますますこのままにしといてはいけないと危惧する。できるだけ飛び火がかからないよう私も移動をしているが、フェイス大佐も0組も派手にやるもんだからこの移動も結構命懸けだった。
 しばらく戦い続けた後、フェイス大佐は攻撃を止めまた町の中を飛び回り始めた。それを追いながら随時エイトに連絡をする。

 フェイス大佐はまた広場に戻り0組と戦い始めた。
 魔導アーマーと言えど0組の攻撃を完璧に防げるわけではない。ところどころで黒煙が立ち上がり始め、そしてとうとう魔導アーマーの動きが止まった。


「うっ…ここまで…か…」


 もう思うように動けないのだろう。止めの一撃だ、と言わんばかりに0組がフェイス大佐に向かって武器を突き付ける。
 それを見て、フェイス大佐が諦めかけたその時だった。


「フェイス様危ない!」
「早くこちらに!」


 その声のしたほうへ顔を向けると、撤退したはずの皇国兵がトグアに戻って来ていた。フェイス大佐が慌てたように声をあげる。


「お前たち!?何故ここに!」
「フェイス様が交戦に入られたと聞き、引き返して参りました!」
「何を考えているんだ!お前たちの敵う相手じゃない!」
「何、命のひとつも懸ければ」
「フェイス様が逃げるまでの時間稼ぎくらいはできます!」


 そう言うと無数の皇国兵が広場に現れた。その中にはコロッサスやウォーリアといった魔導アーマーもいる。それを見て私は背筋を凍らせた。


『メイ、どうした?』
「!…フェイス大佐が逃走、その逃走の手助けを撤収したであろう皇国兵が攻撃をしかけています。数は把握できません」
『逃走したか…メイはすぐ本部に戻るように』
「えっ、でも0組が…!」
『0組なら大丈夫だ』
「でも皇国側のほうが圧倒的に有利ですよ!」
『それでもメイは本部に……あっ、クラサメ武官!?』
『メイ、私だ』
「クラサメ隊長!」


 本部の通信兵に代わって今度はクラサメ隊長の声が耳に入る。クラサメ隊長はその状況を傍で聞いていたのか、すぐ0組の援護に向かうよう指示した。


『武官、何勝手なことを…!』
『0組は私の大切な生徒だ。誰一人殺すわけにはいかない』
『く、クラサメ武官…』
『蒼龍側の朱雀軍が近くにいるはずだ、援護を要請して直ちに向かうよう伝えてくれ』
『りょ、了解しました!』


 クラサメ隊長と通信兵の声を聞きながら、皇国軍に囲まれている0組のところへ向かう。クラサメ隊長のその言葉を聞いて胸の奥が熱くなった。