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 トキトさんと別れた私は正面ゲートに向かう。正面ゲートで待っていれば必ず会えるだろう、そう思ったからだ。正面ゲートへ続く扉を開けると、一番に目が入ったのはルシ・セツナ卿とレムさんの姿だった。
 セツナ卿が出てくるなんて珍しい。レムさんと何か会話をしているようだが少し距離があるためハッキリ聞こえなかった。


「メイ!」
「?あ、エンラ」


 レムさんとセツナ卿を遠くから見つめていたらいつの間にいたのか、エンラに話し掛けられた。あの作戦からエンラに会うのは初めてで、その元気そうな姿にホッと安堵の息をはく。
 そんな私にエンラは照れたように頭をかき口を開いた。


「あのよ…あの時はサンキューな」
「え?」
「あの作戦の時、お前が来てくれなかったら確実に殺られてた」


 あの時とはきっとエイボン奪回作戦のときの、飛行型魔導アーマーに攻撃されたときのことを言っているのだろう。目を伏せてそう言うエンラに私はううん、と頭を横に振った。


「あれは0組のお陰だよ。私は全く歯が立たなかったし…0組が来なかったら私も殺られてたよ」
「…まぁそうだけどさ、でもメイが一番に助けに来てくれただろ?」
「…ん、まぁ…」
「正直助けに来てくれるとは思わなくってビックリしたけど…う、嬉しかった…」
「え、なに?」
「……や、とにかくサンキューな!」


 最後のほうはエンラの声が小さくて聞こえなかったため、聞き直したけどエンラはニカッと笑ってお礼を言った。その笑顔を見て、まぁいいか、とそれ以上は追求しないことにしよう。


「でも私より0組に感謝してね」
「同じくらい感謝してるよ!助けてくれたのにはかわりねぇんだからさ!」
「そっか」
「おう!あ、ところでさ…あそこにいるのレムちゃんとルシ・セツナ卿だよな?」
「あぁ、うん、そうだね」


 エンラの話は一転変わって正面ゲートの側にいるセツナ卿とレムさんの話になる。
 エンラと私は二人のほうへ視線を向けていると、話が終わったのかセツナ卿がレムさんから離れこちらに近付いてきた。変に力が入る。
 セツナ卿が噴水広場へ続く扉を開けようとしたとき、ふとセツナ卿と目が合ってしまった。思わず身体が強張る。


「………」
「あ、こ、こんにちは…」
「ども、ッス…」


 エンラの挨拶になんだその挨拶は!と突っ込みたかったが、セツナ卿が真っ直ぐ私を見てくるものだから突っ込むこともできなかった。セツナ卿はエンラへちらりと目線を向け口を開いた。


「…席を外してはくれぬか?」
「へっ、あ、俺、ですか?」


 エンラが自分を指をさすと、セツナ卿は黙ったままひとつ頷く。私はエンラを見るとエンラも私を見ていた。
 そんなここでセツナ卿と二人っきりにするなんて、とエンラに訴えかけたが当の本人はスマンと口パクをし、そして、じゃあまた後でな、と言い残し正面ゲートからいなくなってしまった。