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サロンに着きさっきと同様、見渡しナギの姿を探す。しかしナギの姿はサロンにはなく全くどこにいるんだと片手で額を押さえる。魔法陣に戻ろうと踵を返すと目の前にカルラの笑顔がどアップで現れた。びっくりして慌ててカルラと距離を取る。
「びっ…くりした…」 「ふふふ、メイ久しぶりね」
さっき自分とキスできそうな距離になったというのにカルラは物怖じせずニコニコと笑っている。どんな神経してるんだ、と別の意味で頭を抱えたくなった。
「そうそう、もう身体は大丈夫なの?」 「大丈夫だけど…誰から?」 「私に知らないことなんてないわ」 「………」
きっとエンラ辺りから聞いたんだろう。どや顔をするカルラに私は呆れてハァ、と溜め息をついた。
「あら、溜め息ついて何か悩み事でもあるの?話聞くわよ?」 「別にいいよ…それよりカルラはどうしてここに?」 「ちょうどメイを探してたのよ」
パチン、とウィンクしてくるカルラに私は顔をしかめる。こう言うカルラの用事は大抵あのことだ。私は諦めて肩を落とし、何、と一言カルラに投げ掛けた。
「実はさ、またお願いしたいんだけど…もうちょっとお金貸してくれないかしら?」 「……また?」 「これは投資よ、投資!貸せば貸しただけ大きくなって返ってくるからさ!ね!?」 「…はあ」
両手を合わせて軽く頭を下げるカルラにしょうがないな、と私が呟くとカルラの顔が一気に明るくなった。甘やかしすぎかとも思ったが、もう言ってしまったものはしょうがない。 私がいくらいるの、と聞いたらカルラは満面の笑みを浮かべて口を開いた。
「10000ギル貸して!!元手が大きければリターンも大きいのよ!」 「はいはい…10000ギルね」
普段食事のときにしか使わない財布を取り出し、中身からお札を取り出す。それをカルラに手渡すと、得意気な顔をして腰に手をあてた。
「さっすがー!任せといてよ!信頼は裏切らないわ!」 「ま、期待しないで待ってる」 「そんなこと言わないでったら!持つべきものは友よねぇ、本当にありがとうメイ!楽しみに待っててね!」
そう言うとカルラは軽やかな足取りでサロンを後にした。カルラがいなくなって一気に静かになったサロンは、まさに嵐が去ったあとの静けさといった感じだ。 カルラもいなくなったし他の場所を探すかと魔法陣に足を踏み入れようとしたとき、また誰かが私を呼び止める声がした。声で誰だかわかった私はゆっくり振り返る。
「トレイ…」 「元気そうで何よりです」
にこりと微笑むトレイに、私は苦笑する。そんな私を不思議そうに首を傾げどうかしたのですか?と問い掛けてきた。
「いや、なんか誰かに会う度に身体大丈夫?とか心配されちゃうからさ…」 「それほどメイが心配なんですよ」 「…そんなに心配になることかな」
これでも一応今まで死なずに生きて来たんだけどな、と呟く。それを聞いたトレイは目を丸くさせ、クスクスと笑い始めた。何がおかしいのかとジト目でトレイを見つめると、あぁすみません、と笑ったことを謝るがまだ頬は緩んだままだ。
「あなたが思ってるよりもずっと、皆あなたのことが心配なんですよ」 「…心配されるようなことしたっけ」 「メイは頑張りすぎるところがありますからね」
トレイのその言葉にそういえばシンクにも同じこと言われたなと思い出し、ふふ、と笑ってしまう。それをトレイは見逃さなかった。
「私の他に誰かに言われたんですね」 「え………まぁ」
図星を突かれ答えに詰まる私を、何故か優しい眼差しをして微笑むトレイに少しだけ顔に熱が集まる。なんだその子どもを見るような眼差しは、そう思って眉を寄せてトレイを睨み付ければまたクスリと笑われた。
「照れてるんですか?」 「は!?て、照れてないし、てかそんな変な顔して見ないでよ!」 「そんな顔とはどんな顔でしょう」 「!…トレイってそういう人だったっけ」
ちょっとムッときて口を尖らして不快感を醸し出す。トレイは眉を八の字にさせてすみません、と謝ってきた。それでもまだ面白がっているのがわかる。
「何がそんなに面白いの」 「反応がわかりやすいんですよ、あなたは」 「………」 「そんな睨まないでください」
両手を上げてお手上げポーズをするトレイに私は肩を落とした。少し気を抜きすぎたかもしれない、これからは気を付けようと肝に銘じる。 もうそういうことしないでよね、とトレイに釘をさし逃げるようにサロンを後にした。トレイが苦手な理由がわかった気がした。
「……わかりやすいんじゃなくて、わかりやすくなった、という方が正しいかもしれませんね」
そうトレイが呟いていたのを私は知るよしもなかった。
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