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エイボン奪回作戦前日。 私はクラサメ隊長を探していた。先日、ナギから聞いたエイボン奪回作戦の任務について不思議に思ったことがあったからだ。
(どうしてクラサメ隊長は…?)
考えれば考えるほど謎に包まれ、何故か嫌な予感がしてならなかった。直接本人から聞かなければ納得がいかない。どうして私に0組のサポートをさせるのか。 軍令部に行ったがクラサメ隊長はいなかった。それならば、と0組の教室へ足を運ぶ。
「?あれ、メイじゃん。そんな慌ててどしたの?まさかまたあいつに追われてんの?」 「!ケイト!」
0組の教室へ続く扉からちょうどケイトが出てくる。ケイトの言うあいつは多分ジャックのことだろう。私は肩をすくめて首を横に振るとケイトは腕を組み首を傾げた。
「ジャックじゃなくて…クラサメ隊長、見なかった?」 「隊長?見てないけど…またなんで?」 「そっか…ううん、聞きたいことがあって。ありがとう、ケイト!」
私は踵を返して魔法陣へ入る。 教室にもいないとすれば一体どこにいるのだろう。自室は今朝行ってみたが裳抜けの殻だったし、クラサメ隊長が行きそうな場所なんて思い付かない。
(手当たり次第探すしかないか…)
とりあえずリフレッシュルームから回ってみよう。
* * *
「またなんでメイにあんな任務をさせるんですか?」 「理由を言ったとして、お前が納得するのか?」 「そりゃ納得はしないですけど。…ただ気になったんです」
飛空艇発着所。そこには珍しい組み合わせの二人組がいた。
「アンタのことだから、なんか考えがあるんだろうけど」 「フッ、お前は本当にメイが大事なんだな」 「…わかってるならなんで」 「私ももう、長くはないだろう」 「………」
その意味をわからないはずがない。あの時、ナギとメイが自分と軍令部長の話を盗み聞きしていたのをクラサメは知っていた。そんなクラサメにナギはグッと奥歯を噛み締め、顔をしかめる。 クラサメは前を向いたまま、話を続ける。
「今私は、私にしか出来ることをしなければならない。…もし私がいなくなってしまったら、0組を見てくれる人がいなくなってしまう。まぁ、あいつらのことだ、私がいなくても大丈夫だろう。だが──」 「…んだよそれ。まるでメイに責任を押し付けるみたいじゃねぇか」 「…そうではない。メイは私以上に0組を見てくれている。そしてこれからも、メイには0組を見ていてほしいと思っている。だからこそ今回の作戦はそのためとも言える」 「………」 「ナギ、お前にもメイのサポート役として頼みたい」 「…メイにはどう言うつもりなんだよ」 「メイには上手く言っておくさ…。だが、今言ったことは言わないでいてほしい」 「………」
納得しろと言う方が無理だろう。クラサメはナギを真っ直ぐ見つめる。力強く握られている拳は何に対するモノなのだろうか。 ナギはハァ、と溜め息をつきわかりました、と返事をする。断ることができないのだ。
「その代わり、長くはないなんて嘘でも言わないでください。…アンタが生きてる限り、0組の隊長はアンタなんだから」 「…あぁ、そうだな」
生きている限り、0組の隊長はクラサメしかいないしクラサメ以外に誰もいないのだ。出来るならメイが0組のサポートに回らなくてもいいように、クラサメには死んでほしくない。 そう願うナギに、クラサメは空を見上げるのだった。
(戦場に出られる私が状況を把握しやすいから…?) (そうだ、何かあったらすぐにモーグリに知らせてくれればいい) (え…と、じゃあ指示は出さなくても) (戦場の状況を把握しているメイならすぐ指示を出せるだろう?) (えぇ!?やっぱり指示までやるんですか?!) (私も出来る限りサポートはするつもりだ。…この先、メイのためにもなるだろう。頼んだぞ) (えっ、ちょ、隊長!)
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