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 トグアの町に向かう道中、0組の活躍で第一陣地、第二陣地は朱雀に落ちたという報告を受けた。
 私はそれを聞いてホッと安堵したがすぐに次の指示をモーグリに伝える。とりあえずトグアの町の偵察に行くので0組はエンラ部隊の支援をお願い、とモーグリに伝えるとモーグリはわかったクポ、と了解をしてCOMMを切った。
 これでエンラの負担は多少減ると思う。

 白虎から奪った第一陣地、第二陣地は朱雀軍がトグアの町に向かって出撃していた。
 ここまでは順調だ。


「白虎もまだこれだけじゃねぇだろうな…何か仕掛けてくるに違いない」
「油断はできないね…とりあえず、トグアの町に行ってみないと」


 朱雀軍に混じってトグアの町へと侵入する。トグアの町は朱雀軍の攻撃により既に戦火が上がっていて、ここが落ちるのももう時間の問題だろう。しかし皇国にはまだ何かあるような気がしてならない。
 私たちは皇国兵に気付かれないようにトグアの町を進んでいく。そして中央広場に差し掛かったとき、白虎の飛行型魔導アーマーが私たちの目に入った。


「やっぱりな」
「人手が少ないと思ったら、飛行型魔導アーマーがいるからだったんだね」
「白虎は魔導アーマーが主な戦力だからな…予想はしていたが飛行型か」


 お互い苦い顔をして飛行型魔導アーマーを見つめる。
 そこへ私のCOMMにモーグリから連絡が入った。


『0組、第三、第四陣地落としたクポ!そっちはどうクポ?』
「案外早かったね…こっちはトグアの町の中で、今飛行型魔導アーマーを確認した。すぐに0組はトグアに向かうよう伝えてくれる?」
『了解クポ!すぐ連絡するクポー!』


 この戦場には似合わない可愛らしい声に、私は苦笑を浮かべる。COMMが切れると私はナギに0組がもうすぐここに来ることを伝えると、ナギはそっか、と短く返事をした。


「0組が到着するまで見張ってるか」
「そうだね」


 建物の影に身を潜め、飛行型魔導アーマーを見つめていると、ある一人の人物が飛行型魔導アーマーに近寄る。その人物の身なりを見る限り、他の皇国兵よりも身分が格上だとすぐにわかった。
 ナギはその人物を見てあいつは、と声を漏らす。


「誰か知ってるの?」
「あぁ…白虎に潜入したとき皇国兵からあいつの話を聞いたことがある。本人と話したことはねぇけどな」
「へぇ…」


 それからナギはあの人物のことを私に教えてくれた。
 あのカトル・バシュタールと同じく飛行型魔導アーマー乗りの使い手で、若い割には相当腕がたつらしい。人情厚く、部下からも慕われているエースパイロットで、名前は確かフェイス大佐だとナギは言う。


「!動くぞ」


 ナギの掛け声に私は飛行型魔導アーマーのほうへ視線を移す。そのフェイス大佐という人が飛行型魔導アーマーに乗り、町の外へと向かうのが見えた。
 私たちもそれを慌てて追う。

 トグアの町から出ると、飛行型魔導アーマーが第二陣地へ攻撃を仕掛けていた。


「やべぇな…0組は?」
「今向かってるって…」
「0組が着くまでもってくれよ…!」


 他の部隊は白虎の歩兵部隊、魔導アーマー部隊で手が回らず飛行型魔導アーマーに対抗するには0組の力が必要だった。仕方のないことだとわかってはいるが、ただ見守ることしかできない自分が情けなく思う。
飛行型魔導アーマーを力強く見つめ、グッと拳を作った。


「…やっぱお前は9組には似合わねぇな」
「…え?な、なに急に…」


 そう返してもそれ以上ナギは口を開くことはなかった。