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 森の手前で第四陣地を食い入るように見つめる。機械音が耳に届いたのは確かだ。よく目を凝らして見ていると、第四陣地の中は先ほどと同じで慌ただしく皇国兵が動いており、そしてその中にコロッサスらしき魔導アーマーの姿を確認することができた。


「やっぱり魔導アーマー…!」


 機械音の正体はやはり魔導アーマーのコロッサスという機体で、見ている限り、第五陣地から派遣されているようだった。そして第四陣地から今にも出撃しようとしている。私はすぐCOMMでモーグリに連絡しようとするが、通信が遮断されているのかなかなか繋がらない。
 そうこうしているうちに、ひとつのコロッサス部隊が第四陣地から出てきてしまった。本陣に向かうつもりだろう。


「COMMは繋がらないし、どうしようか…」


 COMMが繋がらない状態では何もできない。
 今からでも遅くはない、私が走って本陣に知らせよう、そう思い私はコロッサスに気付かれないように走ろうとした。しかし走ろうとした際に運悪く小石を蹴ってしまい、その小石がちょうどコロッサスの歩いている前まで飛んでいってしまった。


(しまっ──)
「!誰だ!」


 小石が出てきたところにコロッサスの銃口が向けられる。その銃口は私に向けられていて、ヤバい、と思ったが見つかったことに動転してか足が動かなかった。
 殺られる、と反射的に目を瞑ったその時だった。


「サンダガ!」
「!」


 コロッサスが今にも発射しようとしていたとき、聞いたことのある声とサンダガのバチッという音が耳に届いた。特徴的のある声に、いつもレムさんのことで相談してきたあの人の声。
 銃口を私に向けていたコロッサスはサンダガをまともに食らい、耐えることができずに爆発を起こして機体はバラバラになってしまった。それを呆然と見つめていると、見慣れた顔が覗き込むように目の前に現れた。


「よっ、大丈夫だったか?」
「エンラ…」


 ドヤ顔をするエンラに、私はホッと胸を撫で下ろす。でも一体どうしてここにエンラがいるのだろうか。
 私はエンラに声をかけようとしたら、後ろから誰かに頭を軽く叩かれてしまった。誰だ、と後ろを振り返ると眉間にシワを寄せて明らかに怒っているナギがいた。


「動くなっつったろうが!」
「い、いやだって、第四陣地に魔導アーマーの気配があったから」
「だからって、動くなら動くって一報入れろよ」
「通信が遮断されてたのか繋がらなかったんだけど…」


 私は私のできる限りのことをしたまでで、どうしてこうも怒られなければならないのだろうか。理不尽なことばかり言うナギにイラッとしてしまい、抵抗するように睨み付けた。そんな私とナギの緊迫した空気の中、エンラが私たちの肩に手を置いた。


「まぁまぁ、こんな時に痴話喧嘩なんかしてる場合じゃないぜ。メイも無事だったわけだし、んな怒らなくてもいいじゃねぇか、な?」
「…まぁ、そうだけどよ」
「メイも、ナギはメイのことになると心配通り越すんだから、あんま無茶すんなよ」
「…うん」


 エンラが仲裁に入ってくれたお陰で、緊迫した空気はなくなったがそれでも気まずかったりする。何も言えないでいるとナギは目を伏せ頭をかいて、わりぃ、と謝ってきた。それを聞いて、私もごめん、と謝る。
 でもやっぱり気まずいので話題を変えるために、エンラに話しかけた。


「…それよりも、エンラはどうしてここに?」
「俺か?本陣から連絡受けてな、第四陣地突破の担当を任されたんだ。それで第四陣地に向かう途中ナギに会って、ついでにコロッサスに襲われてるメイを見つけたってわけ」
「私はついでか」
「メイをいち早く見つけたのはナギだけどな!」


 ニカッと笑うエンラに、チラッとナギのほうへ視線を移す。ナギと目が合ったがパッとそらされてしまった。


「てことで、ここは俺が食い止めておくから、二人は次の任務に行っても大丈夫だぜ」
「…ま、エンラだけじゃ頼りねぇから後で支援部隊送るからな」
「俺だけじゃ頼りねぇってどういうことだよ!」
「0組の今の任務が終わり次第、エンラのとこに向かわすからそれまで頑張ってね」
「なんだと、レムちゃんが来てくれるって!?よーし、ここはいっちょかっこいいとこ見せないとな!」
「…ヘマすんなよ」


 0組、という言葉でエンラは気合いが入ったみたいだ。0組=レムさん、という方程式がエンラに刻まれているらしい。
 私とナギは目を合わせて肩を落とす。そんな中エンラはコロッサス部隊と歩兵部隊と交戦し始めたので、私たちはここはエンラに託し急いでトグアへと向かった。