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 842年 土の月23日

 この作戦は大規模なエリア制圧戦である。
 朱雀軍は、軍事同盟を結んだ蒼龍と皇国の合流前に、エイボン地方の皇国軍を撃破、蒼龍国境を固める作戦を計画した。





 作戦当日、私とナギはチョコボに乗って朱雀軍と共に魔導院を出てエイボン地方へと向かう。エイボン地方に着くと既に戦火が上がっていた。


「ここから俺とメイは朱雀軍とは別行動するから」
「ん、わかった」
「頼んだぞ、ナギ、メイ。くれぐれも皇国に見つからないようにな」
「そっちも、頑張れよ」


 朱雀軍の兵士とのやり取りをした後、私とナギは本陣から離れ森の方へと身を隠す。チョコボを安全なところへ待機させ、第一陣地のあるところへ向かった。
 第一陣地が見えてきたところでナギや私は足を止め、目を凝らして第一陣地を見つめる。


「戦ってんなー」
「思ったより激しいね」
「すぐ0組のモーグリに報告、ついでに視界も悪いっていうことも伝えとけ。第一陣地を落としたあと、第二陣地も落としておいたほうがいいな…よし、そのこともモーグリに報告な」
「了解」


 私は第一陣地の状況を0組のモーグリに報告し、ナギに言われた通りのことを伝える。モーグリは私の報告を聞いたあと、すぐ0組に任務を言い渡していた。その素早い対応に感心しながらも私とナギは一度二手に別れて、ナギは第三陣地、私は第四陣地へと向かうことになった。


『第四陣地に着いたか?』
「うん、着いたよ」
『様子は?』
「……少し、慌ただしいかも。何か作戦がある感じ、ナギのほうは動きある?」
『そっちもか…こっちも動きが慌ただしい。一斉に来るかもしれないな』
「…モーグリに不穏な動きがあること伝えておくね」
『おう、よろしく。俺もそっちに行くから、メイは動かずに第四陣地を見張っててくれ。そこから絶対に動くなよ』


 別に来なくてもいいのに、と言いそびれたがナギは私に有無を言わさないかのようにCOMMを切った。ブツッと切れたナギからのCOMMに私はハァ、と溜め息をつく。
 とりあえず0組のモーグリに第三、第四陣地の不穏な動きを速やかに報告しておく。モーグリはわかったクポ!と言ったのを聞いて、第四陣地に目を移すと皇国軍が本陣に向かって進行しているのが目に映った。


「!モーグリ、第四陣地から皇国軍が本陣に向かってる!」
『クポポ!?了解クポ!今ナギからも連絡がきたクポ。どうやら第三陣地の皇国軍も本陣に向かってるらしいクポ。0組に報告してくるクポ!』


 そう言うとCOMMが切れる。
 大丈夫だろうか、と心配しながらナギが来るまで第四陣地を見つめる。すると第四陣地から微かに機械が動いているような、そんな音が聞こえてきた。


「機械の音…?もう少し近寄ってみなきゃわかんないな」


 機械の動く音に第四陣地へ向かって足を踏み出そうとするが、ナギからの絶対に動くなよ、と言われたことを思い出して踏み出そうとしていた足が止まる。
 絶対に動くなよ、と言われたのに私が動いたらナギは間違いなく怒るだろう。だけど、私の今の任務はこの戦況を把握し速やかに0組のモーグリに伝えることで、ここで私がもし動かずにいたら朱雀にとって痛手を受けるかもしれない。
 そう考えたら動かないではいられなかった。
 心の中でナギに悪いと思いながら、私は第四陣地に向かって再び足を踏み出した。