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なんとなく気まずい空気のなか、デュースさんが何かを思い出したのか両手をパンと叩いて、口を開いた。
「メイさんはホシヒメさんが蒼龍のルシになったという話、お聞きになりました?」 「え?ホシヒメ、さんが?」 「はい。ホシヒメさんが、亡き女王陛下の後を継いで、新たな蒼龍のルシとなられたそうです。蒼龍はこれを大々的に吹聴しています」 「蒼龍のルシに…」
ホシヒメさんとは話したことはないし、直接関わったこともない。私からしてみたらどうってことないことなのだが、女王という言葉を聞いて胸がギュウと締め付けられた。 自然と首飾りを握る。
「暁の守護、蒼龍最強ともうたわれるホシヒメさんがルシになったという話は、国民の士気を上げますでしょうし、また少なからず敵国を動揺させることができるでしょうから、正しい戦略と言わざるを得ません」 「うんうん、確かに」
そう頷きながらデュースさんって案外ちゃんと考えてるんだなぁ、と失礼なことを思っていた。デュースさんは続けて喋る。
「次にホシヒメさんと会う時、彼女はわたしたちの話を聞いてくれたホシヒメさんではないんです。もう、蒼龍のルシなんです。間違いなく、強敵になるでしょうね」 「…なんか問題山積みだね」 「そうですね…」
白虎に蒼龍。今や蒼龍は白虎のものと言っても過言ではない。ホシヒメさんがルシになったことで蒼龍は勢い付くはずだし、白虎もここぞとばかりに仕掛けてくるはずだ。 面倒なことになりそうだな、と溜め息をつく。それにしてもデュースさんといい、0組の子たちといい、こんなときでも落ち着いてて逆に感心してしまう。
「デュースさん、落ち着いてるね」 「え?そ、そうでしょうか…。でもそれを言うならメイさんだって」 「ん?あぁー…ま、私これでも諜報員だし、臨機応変に対応することは慣れてるっていうか」
そう言うとデュースさんは納得したように頷く。さすがドクター・アレシアが親なだけある。 そういえば前にナギから、デュースさんや0組の子たちは幼い頃にドクター・アレシアに引き取られたと聞いたことがある。それを聞いたときはそれほど興味はなかったが、今は少しだけ興味があった。 私は意を決してデュースさんに聞いてみる。
「あの、さ」 「はい?」 「デュースさんたちはいつからドクター・アレシアの元にいたの?」 「マザーの元、ですか?そうですね…私は8歳のときでした」 「8歳…」 「はい。あ、ちなみにジャックさんは私の前からいましたよ」 「ふーん…てなんでジャックが出てくるの」
意外にすんなり教えてくれたデュースさんに面を食らう。聞いてもいないのにどうしてジャックが出てくるのかは謎だが、そうか、そんな小さい頃から一緒だったのか、と呟く。
「ふふ、ジャックさんのこと気になるかなと思いまして」 「えー…デュースさんまで…」
結局0組のほとんどの人が私とジャックの組合せに納得していることがわかるのだった。
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