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やっとのことで朝食にありつけた私は、マスター特製カルボナーラを食べていた。 このカルボナーラ、他で食べるよりもずっと美味しくて、マスターの作る以外のカルボナーラが食べられなくなるほど絶賛なのだ。1日3食しか食べられないという、幻と言っていいほどの代物だ。久し振りに見たマスターは私を見るなり涙を流すなど少し大袈裟な気がするが、特別にこのカルボナーラを作ってくれたのだ。
「いやぁ、メイちゃんが白虎にいたなんて驚いたよ。しかもこうして生きて魔導院にいるんだ、こりゃ奇跡だね」 「奇跡ですかねー…でもそれを言うならあの白虎から脱出できた0組も奇跡、ですよね」 「はは、ちげぇねぇ」
マスターは相変わらず元気そうで安心した。フォークで麺をクルクル巻いて口に運ぶ。まろやかな味わいが口のなかにブワァッと広がり、ほっぺが落ちそうなくらい美味しい。
「メイ?」 「ん?あ、セブン」
セブンが私を覗き込むように現れた。私を見るなりセブンは久し振りか?と聞いてきた。 そういえばそうなるか。ずっと部屋で待機だったしナギとジャック以外会ってないし。
「うん、久し振り」 「最近見かけなかったが、何かあったのか?」 「ん、まぁちょっとね」
最後の一口を口に入れると、フォークを置きご馳走様と手を合わせる。そこへマスターが空になったお皿を下げてくれた。 ありがとうございます、とお礼を言うとマスターはニコリと笑ってどういたしまして、と返してくれる。コップに入ってる水を一気に飲み干すと、いい食べっぷりだな、とセブンが呆れたように言ってきた。
「お腹減ってたからね」 「そうか…今日ジャックがメイのところに来なかったか?」 「う…来たには来たけど、今日は自由に過ごさせてもらうことにした」 「そうだったのか」
皆、私と話せばやれジャックだやれナギだと、私はどんだけあの二人のセットになっているんだろうか。 しばらく1人で行動することにしよう。と言ってもナギは私の監視役だから魔導院以外で1人になることはないが、一方でジャックの悲しそうな顔が頭に浮かんだ。
「メイは何も言われなかったのか?」 「え?」 「…朱雀に内緒で白虎に滞在していたことだ」 「や、別に内緒で滞在してたわけじゃないんだけどね…」
あれは不可抗力だ。そう言えばセブンは心配そうな顔をして私の顔を覗いてくる。なんでセブンがそんな顔をするのだろう。
「どうしたの?」 「私はそんなに頼りないか?」 「え!?」
そんな台詞を、まさかセブンから聞けるだなんて思いもしなかった私はきっと今変な顔をしてるだろう。セブンは至って真剣な表情をしていて、どう答えたらいいか考えてしまう。 セブンが頼りないわけではないし、むしろ私より頼りになるだろう。
「た、頼りないわけじゃないよ」 「…いつも1人で色々なことを背負っているだろう?」 「そんなこと…」
ない、とは言えなかった。 言ったとしてももうセブンはわかっているだろう。セブンは本当に人のことをよく見てると思う。セブンの前で嘘をついても、すぐ見抜かれるだろうな。
「……セブンには敵わないなぁ」 「やっぱり何かあったんだな」 「まー0組とかわりないよ。ただ私は謹慎処分を受けただけ」 「…本当にそれだけか?」
まだ私が嘘をついていると思ってるのだろう。 でもこれだけは言えない。ドクター・アレシアが私の処分を預かったことを、0組には言いたくなかった。何故か言ったらいけない気がしたから。 私はそれよりも、と話題を変える。
「あの事件のせいで悪い噂が流れてるらしいね」 「あぁ…信じてくれる奴とそうでない奴がいる。私はそれでいいさ」 「…そっか」
セブンらしい答えに頬が緩む。こういうところが皆から頼りにされてるんだろう。 確かに言わせたい奴には言わせておけばいい。周りがどう捉えようと、この状況はもう変わることがないのだから。
「…あのさ」 「ん?」 「セブンのこと頼りにしてるから!」 「…そうか」
自分を信じてくれる人を感謝し、大切にしよう。そう素直に思えるのはセブンのお陰だからだろう。 フッと微笑むセブンに、照れ臭くなった私はマスターにコップを突き付けておかわり!と声をあげるのだった。
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