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クリスタリウムの扉を開けると、ジャックと似たような金髪と赤いマントが目に入った。もしかして、と思い近付いてみるとちょうどタイミングよくその人は振り返ってバッチリ目が合ってしまった。
「お、メイじゃねぇか」 「…こんなとこで何してるの?珍しい」 「あー、この間のミッションの資料が欲しくてよ」
こんなに本がいっぱいあっちゃあどこにあるかわかんねぇよコラァ、と頭をガシガシかきながらグルリと見渡す。私はハァ、と溜め息をついて何の本が欲しいの?とナインに問い掛けた。
「探すの手伝ってくれるのかオイ!」 「うん、で、どの資料?」 「あぁ、メロエ地方の地図なんだけどよ…」 「…地図?」
資料と言うより地図を探していたのか。メロエ地方の地図なんて何に使うんだろう。とりあえずメロエ地方の地図がある本棚へとナインを案内する。
「「あ」」
二人してハモった先にはクオンが分厚い本を立ちながら読んでいた。 クオンはまだ私とナインに気付いていないらしく、真剣に本を見つめている。そんなクオンにナインが絡み始めた。
「アァン?またてめー」 「ふぅ」
私は頭を抱えたくなった。何故ナインはこう喧嘩っ早いのだろうか。クオンはナインの声に反応したものの、溜め息をついて本を一旦閉じるがナインに向き合う様子はない。どうやら無視を決め込んだようだ。
「ってため息だけでシカトかっ!ゴラァ!」 「な、ナイン…」
小声でナインに声を掛けるがどうやら聞こえていないらしい。ナインはクオンを挑発するように続ける。
「へっ、大方友達がいなくて読書しかやることねぇんだろ?アァ?」 「………」 「ってまた無視かよゴラァァ!!」 「ナインってば!」
ようやく聞こえたのか、ナインが私に振り返り、私の声に反応したのかクオンも振り返った。ナインとクオンが顔を合わせると、一触即発な雰囲気が漂う。 どうしたものか、と片手で頭を抑えていると私たちを見かねたクイーンさんが声をかけてきてくれた。
「今日は一体、どんな本を読んでるのですか?」 「!ほぉ、興味があるかね?メイもそうなのだろう?」 「え!?いや……はい、そうです…」
クオンのキラキラさせた目を見て、興味がない、と言いづらくなってしまい頷くしかなかった。私の反応に満足したのか、クオンは得意気に話し出す。
「これは【魔法理論大全第七八篇】、魔法初心者から上級者まで大変参考になる本です。魔法に関する一通りのことは載っていますからね」 「や、それって…」 「いや待てコラ、それ辞書だろ?」 「しかも全部で壱〇五篇まであります。それの七八まで読んでるということですか?」 「何を言いますか、これで6周目です」 「「「………」」」
クオンのその発言に言葉を失う。私もナインもクイーンさんも、この分厚い辞書を6周も読んでしまうクオンに引いてしまった。 そんな私たちにクオンは、これがどんなにスゴいことなのかわからないのか、どうしました?と暢気なことを言い出した。
「いや、少し反省した。友達いなくてもそんなに本読むならすげーわ」
ナインの表情が少しだけ憐れんでいるような気がしたのは気のせいではないだろう。悪気のないナインの言葉にクオンは眉間にシワを寄せ、前髪を払う仕草をしながら口を開いた。
「友達いないは確定情報なのですか?」 (コクン) 「?!」
クイーンさんが頷いたことに私は目を丸くさせた。そうかクイーンさんもそういう風に見ていたということなのか。 私が驚いてクイーンさんを凝視していると、いきなりクオンにガシッと腕を掴まれてしまった。
「なっ?!」 「メイは友達ですよね…?」 「え゙」 「…そうなのかよコラァ」 「そうだったんですか?」 「え?えっ!?」
クオンが悲しそうな表情で私を見るが、その反対にナインとクイーンさんが若干引いているような眼差しを私に向けていた。私はどう答えていいかわからず、言葉を濁していたら友達ですよね!?と詰め寄られてしまった。
「ま、まぁ、そう、でしょうね…」 「ふっ、聞きましたか?私は本以外にもメイという素晴らしい友達がいるのですよ!」 「……メイさんも大変ですね」 「はは、…はぁ」
勝ち誇ったように言うクオンに、クイーンさんもナインも私に同情をしてくれた。クイーンさんはまだしも、ナインにまで同情されるなんて思いもしませんでした。
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