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 ナギもジャックもお互い譲らず埒があかないため、仕方なく間に入り二人を宥める。その際にしばらく私は1人で行動することを話すと、二人とも眉間にシワを寄せて不服そうにした。


「俺は一応お前を見てなきゃいけない任務が」
「僕もメイと一緒にいなきゃいけない任務が」
「ナギはまぁ良しとしてジャックは何言ってんの」


 そんな任務聞いたことがない。
 ナギは私を監視しなきゃならないが、だからといって一日中監視はされたくない。そのことをナギに言うと、まぁ確かになーと同感を得てくれた。そこでナギに条件を出される。


「魔導院から出るときは俺を呼ぶこと」
「うん…出ないと思うけど…わかった」
「出たら一生付きまとってやるからな」
「冗談にしても笑えないよ」
「そうだよー、僕が先約なんだからね」
「それもおかしいよね」


 これじゃあ漫才みたいだ。だとしたらボケがナギとジャック?私がツッコミ?自分がツッコミ役…少しだけ納得してしまった。
 ナギはすんなり理解してくれたが問題はジャックだ。拗ねたように口を尖らせてソッポを向いている。私が歩くと後ろを着いてくるし、ナギよりも厄介だった。
 ナギも今日はやめとこうぜーとジャックを宥める。


「だってー…」
「久し振りに部屋から出られたんだぜ?メイだって色んな人と触れ合いたいだろ」
「いっ色んな人と触れ合いたい…!?」
「その言い方誤解を招くからやめて!」


 今でさえしつこいのに、そんなこと言ったらもっとしつこくなりそうだ。
 ジャックはムンムンと唸り、やがてハァ、と溜め息をついて顔を上げた。


「…また明日、会いに行っていい?」
「……う、ん。まぁ、どうぞ」
「なら今日は諦める…」
「…ありがと、ジャック」


 眉を八の字にさせるジャックに罪悪感を感じてしまったが、感じた後、どうして罪悪感を感じたのかよくわからなかった。ジャックのその顔のせいだ、そうに違いない。
 理解してくれたジャックとナギと別れ、私は借りた本を返すためとりあえず部屋へ一旦戻ることにした。


「…抜け駆けすんなよ」
「…そっちこそ」


 そんな会話がされていたなんて私は知るよしもない。