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勢いよく軍令部を出て、エントランスを歩く。魔法陣の前で足を止めてゆっくり深呼吸をした。
(…やっちゃったな)
はぁー、と深い溜め息をつく。候補生という身分の分際でそこそこ偉い立場である軍令部長に楯突くなんて、無謀にも程がある。 でも我慢の限界だった。私利私欲のために、人を犠牲にするなんて人としてやってはいけないことだ。 こういう人がいるから、戦争なんて起こるんだ。
「あ、メイー!」 「!ジャック…」
0組の教室に続く入り口からジャックが出て駆け寄ってきた。相変わらず元気そうなジャックが羨ましい。 私なんかせっかく久し振りに部屋から出られたと言うのに、さっきのことで一気にテンションが下がってしまった。 ジャックが私に近寄り不意に顔を覗き込んでくる。私は気持ちを落ち着かせ、なに?と言うとジャックはんー、と唸った後口を開いた。
「なんかあったー?」 「えっ…なんで?」 「なんとなーく…なんかあったような気がしたから」 「……何にもないよ」
そう言うとジャックは本当に?と詰め寄ってくる。 ジャックに気付かれるなんて、と内心焦りながらも逃げるように後退り、何にもないって!と強い口調で言い返す。それが気になったのかジャックはにやぁと不気味に笑った。
「やっぱりなんかあったんだねぇ。いつもならそんな強く言わないもん」 「………」 「僕でよかったら相談乗るよー?ていうか乗るから話して!」 「う……」
どうして私は強い口調で言ったのだろう。ふとそう思い、目を伏せた。 心配そうに覗き込むジャックを他所に、私は自問自答を繰り返す。いつもなら…いつもならどう返していたっけ?
「まさか…ナギになんかされたとか!?」 「んなわけねぇだろ!」 「いったぁ!」
ナギの声が耳に入り、我に返る。目の前にいたジャックはいつの間にか土下座のポーズみたいに地に伏していて、ナギは両手をポケットに突っ込み片足を上げていた。 それを見てジャックはナギに蹴られたことに気付く。
「ちょっとー、ズボンが汚れたじゃんかぁ!」 「元々汚れてるだろ」
いつものように言い争いを始めた二人に、悩んでいたことを忘れて呆れながらそれを傍観する。 二人の仲裁なんてしたくない。無駄な体力を消耗するだけだから。
「ナギっていっつもメイの側にいるよねぇ。……本当にストーカーだったりして」 「その言葉そっくりそのまま返してやるよ。ていうかお前のほうがストーカーそのものだろ!」 「僕はメイのボディーガードなんですー!特にナギから護るためにね!」 「俺だってある意味メイのボディーガードだっつーの!それに、俺には正当な理由ってもんが」 「そんなの関係ないもんね!」 「…お前めんどくせぇ」
ゲンナリとするナギに、ジャックは得意気にフフン、と笑う。二人の変なやり取りに笑いが込み上げてきた。
「ふふ、」 「!」 「…何笑ってんだよ」 「なんか可笑しくって」 「あのなぁ、俺がどんだけ大変だと思って」 「その言葉そっくりそのまま返しますー」 「………」
まるで兄弟喧嘩みたいで見てる分には面白い。見てる分には、だけど。 両者睨みあってるが、私が意外と相性がいいかもね、とからかうように言うと二人同時に良くない、とハモってくれた。 そこが相性良いって思うんだけどな。
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