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 結局処分がないまま次の日を迎えた。
 未だにこのままでいいのかと首を傾げるが、ないものはないのでもう気にしないでおくことにする。もしかしたら軍令部長から何か言われるかもしれないけど、そんときはそんときだ。いつまでも悩んでたって解決しないし開き直るしかなかった。


「よし!」


 前の制服は白虎に置いてきてしまったので、新しい制服をさっきシノさんから受け取った。
 シノさんが扉を開けて私を見るなりフッと笑うからなんで笑うんですか!と反論したら、メイが本当に帰ってきたから思わず、とまるで私がもう帰ってこない風に言われてしまった。
 それに対して少しだけムッとなり、帰ってきてすみませんね、と嫌味を言ったらシノさんは私の頭を撫でておかえり、と微笑んでくれた。そんなシノさんに胸がギュウッと締め付けられ鼻がツンとなってしまったことは誰にも言えないだろう。
 シノさんが行ったあとすぐに着替えて今に至る。真新しい制服に、なんだか魔導院に入ったばかりの頃を思い出した。


「…なんか懐かし」


 もう何年前になるだろう。
 ナギと一緒に魔導院入って組分けして腐れ縁かナギと一緒の組になって。あの頃はまだまだ子どもだったな。
 思い出に浸っていたらいつの間にいたのかナギが腕を組んで壁にもたれかけていた。気配を消して入って来るの、正直やめてほしい。


「何ぼーっとしてんの?」
「なんとなく。ていうか気配消して入って来ないで」
「仕方ねえだろ、一応俺は任務中だし」
「……そうだけどさ」


 確かにナギは私を監視しなくちゃならないけど、昨日は監視する気全くなかったように見えたんだけど。ナギはなんかニヤニヤしてるし、あの面思いっきり殴りたい。


「新しい制服だなー」
「白虎に置いてきちゃったからね」
「ま、いいんじゃね?ボロボロの着るよりかマシだろ」
「ボロボロなんかじゃないっつの!」


 いちいちムカつく奴だ。

 私はソッポを向いて部屋から出る。もちろんナギも私の後ろを着いてくる。ナギと一緒にいるのが無期限だなんて、拷問以外の何ものでもない。
 私は溜め息をはいた。


「なんか新しい制服見ると魔導院入ったばっかの頃思い出すな」
「……そうだね」


 考えてることが一緒だなんてさすが幼馴染みというところか。だけど心境は複雑だった。