107.5




 0組の定期検診を終え1週間が経った。今日は候補生メイの処分が決まる日でもある。
 煙管を口にし、紫煙を吐き出すアレシアは何を思っているのか。未だメイの処分について話し合っている議会のところへとアレシアは足を運んだ。





「では、候補生メイについては2組のバハムート部隊への異動を──」
「待ちなさい」


 院生局局長の言葉を遮る声に、局長と院長が目を丸くさせ扉のほうへと振り返る。そこにはいるはずのないドクター・アレシアが煙管を持って立っていた。
 いつの間に入ってきたのか、と驚いている局長にアレシアは口を開いた。


「その候補生の処分は私が預かるわ」
「なっ…!?」
「何を言っているのだ、ドクター・アレシア!あの候補生は0組ではないだろう!」
「そうですよ、ドクター。ドクターはこの者の責任をどう取るおつもりなのですか?」


 局長たちは一斉に反論する。
 0組の責任者であるアレシアが、9組の、しかもアレシアとは何も関係のない候補生を預かるという言葉に、局長たちは納得できないでいた。院長は黙ってそれを見守る。
 アレシアは紫煙を吐き出すと真っ直ぐ局長たちを見て、そしてカリヤ院長へと視線を移した。


「…あの候補生はしばらく監視するつもりよ。危害がないと私が判断したときはあの候補生を0組へ異動させるわ」
「ど、ドクター!何故その候補生に」
「わかりました。ドクター・アレシアにあの候補生を預けましょう」
「かっカリヤ院長…!?」


 カリヤ院長はアレシアに対してひとつ瞬きをすると、アレシアは無表情のまま踵を返して出ていく。
 局長たちは納得できないと言うかのようにカリヤ院長を見つめているが、カリヤ院長は諭すように口を開いた。ドクター・アレシアに考えがあるのでしょう、と。
 そしてカリヤ院長は諜報員のナギ・ミナツチに、メイの処分を伝える。


──候補生メイの処分はドクター・アレシアが預かりました。今まで通り、任務をこなしていくように。


 それを聞いたナギは小さく頷き直ぐ様メイの元へ向かおうとした。しかしそれをアレシアに引き止められてしまう。
 ナギは目を丸くさせてアレシアを見つめた。


「何か」
「あなたにあの子の監視をしてもらいたいんだけど、いいかしら?」
「!メイ…ですか?」
「悪い意味じゃないわ。あの子のためよ」
「……わかりました」


 ナギがそう答えるとアレシアは満足そうな表情をして、ナギとすれ違うのだった。