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 あれから寮に帰り、疲れが限界を越えていたのかベッドに潜るとすぐに眠ってしまった。半日以上は寝ていた気がする。
 ふ、と目を覚ますといつの間に部屋に入ってきたのか、私の顔を覗き込んでいるナギとバッチリ目があった。


「お、起きた?」
「…バッチリ…ていうかいつの間に入ってたの?」
「部屋に入るくらい俺にかかれば朝飯前だぜ」
「………いつから居た?」
「お前が帰ってきてからずっと」
「出てけ変態!」
「うおっと!」


 ナギ目掛けて拳を振るったが、それを軽く避けられてしまい空を切る。まぁ落ち着けよ、と言うナギをキッと睨み付けた。いくら幼馴染みといっても限度があるだろう。


「何にもしてねぇから安心しろって」
「してたら絶交どころか私の前に現れないでほしいくらいだっての」
「はは、あーよかった…元気そうで」
「!」


 怒ってるのにも関わらず、心底心配したような表情をするナギに言葉を失う。その表情を見てナギにも心配させてしまったことに申し訳なく思い、ごめんね、と謝るとナギは優しい表情になり頭を撫でた。


「結果無事だったんだし、謝んな」
「…うん」
「久し振りに会えた喜びを噛み締めたいところなんだけど、今ちょーっと厄介なことになっちまってな」
「厄介なこと?」


 なんだろう、なんか凄く嫌な予感がする。
 ナギは眉間にシワを寄せて、話し始めた。
 朱雀議会は0組に疑いをかけているが、ドクター・アレシアのお陰か謹慎処分などは受けなかった。しかし、私が朱雀に内緒で白虎に滞在していたことがわかると、議会はそれを不審に思い私に関してはまだ処分が決まっていないらしい。
 処分が決まるまでは部屋で待機しておくことを私に伝えろとのことだった。


「俺が白虎に捕らわれたって言っても議会は聞かなかった」
「…………」
「ったくよーあいつらマジ腹立つぜ」
「ま…しょうがない、か」


 議会に期待なんかしていなかったし、こうなることはだいたい予想できた。でもいざこうなるとどんなリアクションをとったらいいかわからなくなる。
 重い処分にならないといいなと願うばかりだった。


「…もしかしたらこれから忙しくなるかもしれないぜ」
「うーん…だよねー…」
「あちこち色んなとこ行かされると思うし、ほとんどのミッションも参加、かもな」
「忙しいなぁ…」
「ま、俺が傍にいるし、メイの処分が決まったら報告しに来るから」
「ありがと、ナギ」


 そう言うとナギはニカッと笑う。その笑顔は安心しろ、と言われてるみたいで自然と頬が緩んだのだった。