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 クラサメ隊長を見送った後、ジャックは私の顔を覗き込みトンベリに指を指して口を開いた。


「ねぇ…なんでこの子は隊長のところに行かないの?」
「ん?あー…なんか私の側に居たいみたい」
「……そうなんだぁ…(こんなとこにも邪魔者がいるなんて…!)」
「……………」


 トンベリは私の腕から降りて、ジャックに向かって刃物を突き出した。ジャックは慌ててそれを避ける。どうやらトンベリはジャックの考えていることを感じ取ったようだった。


「ジャックも今回ばかりは疲れてるでしょ、寮に戻って休んだら?」
「えー…休むくらいならメイと居たいなぁ」
「……言い方を変えるね、私が疲れてるから休みたいんです」


 ジャックも疲れてるはずなのに、なんで私なんかを構うんだろう。いや私と居たいから、ていうのはわかるんだけどもうちょっと自分のことを考えて欲しい。それはナギにも言えることだ。
 私の言葉にジャックの表情は暗くなった。


「…じゃあ僕も一緒に」
「…ね、ジャック」


 私はもう居なくならないから。
 そう言うとジャックは目を丸くさせた。なんとなく、ジャックの言いたいことがわかっての発言だ。もしこの発言にジャックがキョトンとしてたら勘違いも甚だしいが、今のこの表情は見たところ私の発言は間違っていないようだった。


「…ほんとに?」
「もう、またそのやり取りするの?」
「だって、」


 廃屋でのやり取りが蘇る。
 ジャックは顔を俯かせて私の手を握ってきた。いつものジャックはどこにいったんだろう。
 ふと飛空艇で話してたセブンとの会話を思い出す。ジャックは私だけに、私に関わることに喜怒哀楽を出している。心を許せる相手だからこその表現なんだろう。


「私なら居なくならないよ」
「…………」
「何かあったら一番にジャックに連絡するから」
「!ほんと!?」
「ほんと。ほら、わかったならちゃんと休みなよ。自分の体は大切にしなきゃ」
「それ、そっくりそのまま返すよー!」
「………トンベリ、ジャックを寮まで連れてってくれる?」
「……………(コク)」
「え?!刃物マニアと…!?う、後ろから刺される!」
「刺されないから!ほら、行った行った!」


 ジャックの背中を押して前に進ませる。
 トンベリはジャックの隣で早くしないと刺すぞ、と脅してるかのように刃物をジャックに見せる。それを見てジャックは顔を引きつらせていた。さっきまでの不安そうな表情が一変して、なんだか嬉しそうな表情になってるのは気のせいだろうか。


「じゃ、またね」
「うぅ…また明日ねぇ!」


 また明日、そうか明日も私を探すのか。
 ジャックはトンベリにチクチク刺されながら発着所を出ていった。
 私も寮に戻るとしよう。明日辺り、ナギが部屋に来そうだな。
 そんなことを考えながらゆっくりと寮へ向かうのだった。