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 朱雀へと帰る道中。私もソファに座っていたら隣にセブンがここいいか、と声をかけてきた。いいよ、と言うとセブンはありがとうと言って腰を下ろす。


「ジャックはどうしたんだ?」
「あそこで爆睡してるよ」


 ソファに横になって爆睡しているジャックに、セブンは苦笑を浮かべた。セブンはジャックをよく気にかけていると思う。
 優しいなぁと思うと同時にもしかしてジャックのこと…?と疑問を抱いた。


「セブンってさ…」
「ん?」
「ジャックのこと、よく気にかけてるけど…もしかして好き、とか?」
「は?」


 少しだけ気まずい空気が流れる。だってもしセブンがジャックのこと好きだったら自分すごい邪魔しちゃってるし、申し訳ない。
 しばらく沈黙した後、急にセブンが笑いだした。


「ははっ、メイ、私はジャックにそんな感情抱いたことはないから安心しろ」
「え!?あ、安心?!いやいやいや、安心も何もないし」


 私の勘違いだったらしく恥ずかしくなった私は、でもよくジャックのこと気にかけてるよね、と吐き捨てながら顔をセブンから逸らした。


「ジャックのことを気にかけていたのは確かだ」
「…それやっぱ好きなんじゃ」
「だから私はジャックにそんな感情を抱いたことはないって言っているだろう」
「………」


 どうだろうか。セブンは人のことになると結構鋭いんだけど、自分のことになったら鈍いような気がする。セブンの話をふーん、と流そうとすると信じてないのか、と眉を下げて私の顔を覗き込んできた。


「信じてるから…で、なんで気にかけてたの?」
「…私は子どものころからジャックの笑顔はいつも見ていたけど、笑ったところは見たことなかったんだ」
「………」
「でもメイと出会ってから、ジャックは別人みたいに笑うようになった。メイといるときは笑顔じゃなくて、本当に嬉しそうに楽しそうに笑っていたから」
「そ、そう…」


 なんかセブンからそう言われると、照れを通り越して穴があったら入りたい衝動にかられた。ジャックが今まで笑顔で過ごしてきて、私と出会っただけで笑うようになるなんてセブンの勘違いだと思う。
 そんな感じなことをセブンに言ったら、そんなことはない、と否定の言葉を口にした。


「ジャックの喜怒哀楽は私が見た限りメイの前でしか見せない。メイのことになると、ジャックは人一倍必死になってる、それくらいメイが大切な存在なんだと感じた」
「そ、それで…セブンは何が言いたいの?」
「これからもジャックを、よろしく頼む」


 真剣な顔で私の目を見るセブンに、こうなるんじゃないかとだいたいは予想できていた。でもいざ言われるとなるとなんて返したらいいかわからない。
 私が返事に困っていると、メイは今のままジャックと接すればいいからとセブンは付け加えた。本当、セブンは人のことよく見てると思う。

 断れるわけがない私はわかりました、と小さく頷けばセブンは満足そうに微笑んだ。