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 結局あれからマキナは戻ることなく、見張りをトレイとエイトと交代してジャックと一緒に廃屋の中へ入る。私とジャック以外の子は寝ていたり起きていたりとこの廃屋の中で思いのまま過ごしていた。
 壁にもたれて座るとジャックも隣に座ってきた。


「ねむーい」
「寝なよ」
「…メイは寝ないのー?」
「寝られないから起きてるけど」
「じゃあどこにも行かないように手握ってるねー」
「は?」
「おやすみー」


 そう言うとジャックは私の右手を握って目を瞑りすぐに寝入ってしまった。それを見てどんだけ寝付けいいんだ、と感心してしまうほどジャックは深い眠りについていた。


「寝たみたいだな」
「キングさん…」


 手をガッチリと握られているから私はジャックから離れられない。そんな私にキングさんが話しかけに来てくれた。
 キングさんは左側に座る。


「いつも迷惑かけてすまないな」
「え、ジャックのことですか?」
「ああ」


 いやまぁ、もう慣れましたと言うとキングさんはフッと笑ってそうか、と呟いた。ていうかキングさんもセブンみたいな保護者役なのだろうか。
 こんな強面なのに意外すぎる。


「?俺の顔に何かついてるか?」
「え!?いや、何もついてないですよ!」
「……なんで敬語なんだ」
「え?キングさん、私より年上ですよね?」
「………俺はまだ17だが」
「!?す、すみません!」


 え!キングさん私より年下だったの!?もう雰囲気とかが私よりも年上って感じだったのに…顔が老けてるからって理由では断じてない。


「ほんっとーにごめんなさい…!」
「…いや、もういい」
「すみません…」
「もういいって言ってるだろ。……ひとつ、聞いてもいいか」
「…はい」
「俺は……そんなに老けて見えるか?」
「え!」


 私はどうやらキングさんを傷付けたようだ。なんかすごい切ない顔をして私を見るキングさんに、心がジーンと痛んだ。


「そんなことないですよ!私が間違えたのはキングさんがあまりにも大人っぽいからです!私よりも全然落ち着いてるし、大人っぽい雰囲気が出てますし」


 この発言に嘘偽りはない。あとは何を言えばいいだろうと焦っていると、キングさんが鼻で笑い目を細めて私を見た。


「ジャックが気に入るわけだ」
「え」
「こいつに何かされたら俺に言え、あと敬語で話すなよ」
「え、と…キングさんなんで」
「さん付けもするな、わかったか?」
「…(コクコク)」
「じゃ、ゆっくり休めよ」


 私は何も言えずにキングさん…キングは満足そうな顔で廃屋を出ていった。一体なんだったんだろう。敬語なしで呼び捨て、か…。

 隣ですやすやと気持ち良さそうに眠っているジャックを見て、私まで睡魔が襲ってきた。ほんの少しだけ寝よう、そう思って目を閉じた。