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 未だ止むことがないミサイルに、私たちは車両の陰に隠れてどうしたものか、と頭を捻った。あの興奮状態だからか、今がチャンスなはずなのに敵がひとっこ一人出てこない。きっと巻き添えを喰らいたくないからだろう。


──ドォン!


「!」


 私たちが身を隠していた車両がミサイルによって弾き飛ばされ、一気に目の前が明るくなる。
 このままじゃミサイルに殺られてしまうと考えた私たちは攻撃を掻い潜り、道が塞がれている車両の陰へと隠れた。それを追うようにヴァジュラも建物と建物を飛び移り、再び構えてミサイルを撃ってくる。


「あんな遠くちゃ攻撃できねぇじゃねぇか!さっさと降りてこいよコラァ!」
「ナインに同感だが…こればっかりは仕方ない。とりあえずアイツから逃げることを考えよう」


 ナインやサイスさんが苛々しているのがわかる。攻撃されてばかりに苛々するのはわかるが、ここは街のど真ん中で高い建物ばかり、ヴァジュラにとっては戦いやすい場所だ。ここは逃げてチャンスを窺うしかない。


「!皆離れろ!」
「!?」


 エイトの声で皆は一斉に車両から離れる。
 ヴァジュラから放たれたミサイルによって車両は宙へと舞い床に叩きつけられて爆発を起こした。爆発したところを見ると何やらビルに穴が開いているのに気付いたモーグリが皆へ通達する。


『爆発した車両のところを見るクポ!ビルのドアが壊れて中に入れるクポ!ビルに逃げ込むクポ!』
「行きましょう!」


 モーグリの通信に私たちはミサイルの攻撃を避け、壊れたドアの方へ向かって走りビルの中へと逃げ込んだ。
 このまま逃げよう、と口々に言いビルの奥へ進もうとしたとき、ビルの壁が崩れヴァジュラが覗き込んでいた。目みたいな部分が光った時、背筋が凍る。


「逃がさないって……言ってるでしょ!!」


 そう言うとヴァジュラは崩した穴のところから、私たちを捕まえようと何度も何度も突進してきた。
 その度にビルが揺れる。


「出てこい!出てこい!!!卑怯者ーー!!」
「こっわぁ…」
「ていうかクンミって誰だっけ?」
「多分解放作戦に参加したルシですね」


 私もクンミという名前は聞いたことがある。
 0組がルシ・クンミを倒したというのを通信越しに聞いていた。でも名前を覚えているということはまだクンミは生きているはずだ。現にあの人もクンミのことを言っているし、それに今は白虎にいないと聞いている。
 白虎にいないならどこにいるのか。敵であるクンミの行方は私たちでもわからなかった。

 ヴァジュラが突進してくるなか、私たちはそれを無視して奥の通路へと行こうとしたら、ガシャンと窓が割れる音がした。


「どこだ!どこだ!こそこそ逃げるなぁー!」


 反射的に後ろを振り返ると、窓ガラスを割ったところからビルの中に銃口を入れてミサイルを放ってきた。


『猛攻撃クポ!とにかくあいつの攻撃をしのぐクポ!』
「そんなこと言ったって、うわ!」
「ほんっとしつこい…!」


 0組はミサイルの猛攻撃を避けていく。攻撃を避けるのが精一杯で、ヴァジュラに攻撃を与える暇がなかった。
 私もヴァジュラの攻撃を避けていると、突然頭に激痛が走り身体が硬直する。


「い…っ!?」


 ヴァジュラの攻撃は当たってないはずなのに頭の中がギリギリと痛み、もはや立っているのも限界だった。
 攻撃がおさまっていないのに膝をついてしまう。メイ!とジャックが私を呼ぶ声が聞こえたと思ったら、目の前が真っ赤に染まった。