89




 列車を降りてまた街中を逃げ回る。どうやらここは3348地区と言われているらしい。区域たくさんあるなぁとげんなりしていると皇国兵の声がした。


「下だ!下にいるぞ!」
『任務クポ!なんとか町を脱出するクポ!』
『テロリストを発見しました。戦闘が開始されます。市民は速やかに避難してください』


 放送が流れ、階段から降りてきた皇国兵と階段の途中にいる皇国兵を殺し、階段を登って行く。すると前方から二台の車がやってきた。その車の中から皇国兵が現れる。
 いくら倒しても本当にキリがない。


「ゲートを閉じろ!」


 皇国兵がそう言うと私たちの逃げ道がゲートで閉じられてしまった。ゲートを閉じるなら無理矢理にでも開ければいい。
 思ってることが皆一緒なのか、諦めることなく皇国兵を倒して行く。
 周りの皇国兵がいなくなるとゲートが開いた。開いた先にも皇国兵が待機していたらしく、ゲートが完全に開くと同時に突っ込んでくる。


『増援が現れないうちにファントマを回収するクポ!』


 そうモーグリが言うとエースが今しがた殺した皇国兵のファントマを抜く。そういえば私はファントマのことを知る一人だと0組には言っていなかったような気がする。まぁ今こんな状況で私を気にしてファントマを抜くのを躊躇うわけにはいかない。


「メイさんがファントマを知っていることはモーグリから聞きましたよ」
「え!?いつの間に…」


 私が気にしているのを察したクイーンさんが眼鏡をあげて言う。
 いつの間にモーグリから聞いたのか。でもそのお陰でファントマのことも気にしなくて済むから良しとした。

 3349地区に入ると皇国兵が山猫を放てと叫んだ。山猫というのはクァールのことで、二匹のクァールが私たちに向かって襲いかかってくる。
 クァールを見て私はあのときの事が頭の中を過る。クァールには攻撃できないと思った私は少し離れている皇国兵に向かってサンダーを放った。

 皇国兵のファントマを抜き振り返ると、クァールのファントマを抜き終わったのかクァールはいなかった。
 未だモンスターが襲ってこない理由がわからない。きっと私はそれがちゃんとわかるまでこれからもモンスターは殺せないだろう。


「メイ!行くよー!」
「!うん、」


 ジャックの声で我に返り私は足を動かした。

 3350地区に入り曲がり角を曲がると、見たこともない魔導アーマーが私たちに向かって突進してきた。何あれ、と私たちは目を丸くする。


「朱の魔人!貴様らのせいでクンミ様が戻ってこないんだ!!」


 私たちのところへと突進してきた魔導アーマーは、サソリのような形をしていて壁を這う姿が、番外者とは違う意味で凄く気味が悪かった。モーグリの情報によると、目の前の魔導アーマーは皇国で新たに開発された新型高機動魔導アーマーだということ。名称はヴァジュラという。
 ヴァジュラの攻撃を避けながら皆で少しずつヴァジュラにダメージを負わせていると、急にヴァジュラは皇国のビルによじ登り隣のビルへと飛び移った。


「あれじゃ攻撃当たらないじゃん!」
「これでどうだ!!」
「!来るぞ!」


 ヴァジュラが銃みたいに構えると、そこからミサイルが何発も私たちに降り注ぐ。地面にぶつかったりビルにぶつかったりして爆発するミサイルに私たちは避けきれず、道を塞いでいる車両の陰に隠れる。


「死ね!死んで詫びろ!」
「くっ…ミサイルが飛んでくるせいでなかなか攻撃ができませんね…」
「それに距離が離れてるから戦えないな…」
『戦えばこっちが消耗するだけクポ』


 ミサイルが馬鹿みたいに飛んでくるせいで私たちは本体に攻撃ができなかった。
 ヴァジュラに攻撃が届かない人は身を守ることしかできないし、だからといって攻撃が届く遠距離の人たちだけで戦うのは逃げる力を消耗するだけとなる。しかもここで道は塞がれていて、私たちは逃げることもできなかった。