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 私が俯いていると、ジャックが心配そうに顔を覗いてきた。


「メイ?大丈夫?」
「…、私は全然平気」


 それよりもレムさんが何より心配だ。何の病気かはわからないけど前より弱ってきてる。どうすることもできないとわかっているのに、やるせない思いでいっぱいだった。
 ジャックは何も言わずに私の肩をポンポンと、慰めるように叩いた。

 0730地区に入るとモーグリから通信が入る。


『あの皇国兵がキーを持って逃げた理由がわかったクポ!あそこの列車、もうすぐ発車するクポ!』
「!」


 0730地区の真ん中にある列車が今にも発車しようとしていた。その列車を見た私たちはあの列車で逃げようと口々に言い、列車に向かって走り出す。


「敵襲!」
『任務クポ!部隊長のニール中尉を倒して列車が発車する前に乗り込むクポ!』


 ニール中尉を倒すのかよ!と心の中で突っ込み、皇国兵の首に小刀で斬りつける。ニール中尉と言われた皇国兵をキングが銃で仕留め、真ん中の列車まで走り乗り込むと列車が動き出した。


「くそっ!逃げられた!」
「追撃できません、支援願います!」


 まだ追い掛けてくる気満々だ。この列車で首都を抜けられるといいけど、まぁそんな簡単に上手くいくわけないだろう。
 列車の上で一時休息をとっていると、隣の線路に多分敵が乗っているだろう列車が後ろから走ってきた。


「目標発見!座標位置送ります!」
「また新手か」
「次から次に」
「はぁ…少しは休ませてよぉー」


 私たちは戦闘態勢に入り、それを向かい撃つ。隣の列車は私たちが乗っている列車にくっつき、乗り込めるよう通路を造り乗り込んできた。
 乗り込んでくる皇国兵を倒していると、頭上に空中機動兵が現れる。


「全くしつこいね!」


 空中機動兵にサイスさんが突っ込み、空中機動兵の懐を突く。それが効いたようで空中機動兵は列車の上に転がり、留めをさした。
 一歩間違ったら大怪我を負うかもしれないというのに、良い度胸してるなぁと感心してしまった。一通り倒し終わるとまたモーグリからの通信が入る。


『これだけで終わるはずないクポ。列車を調べるクポ』


 それを聞いた私たちは隣の列車へと乗り移ると、皇国兵がそれを待っていたかのように現れた。


『まだ潜んでたクポ。全員倒すクポ!』
「列車を停止させろ!」
「!」


 次々に現れる皇国兵の相手をしていると、前方のほうに空中機動兵が列車を攻撃していた。急いでアレを止めなければ、と思ったが皇国兵に足止めされてなかなか進めない。
 やがて列車から白い煙が出始めた。


『空中機動隊が動力源を攻撃してるクポ!列車を止める気クポ!』


 モーグリの通信に私たちは動力源のほうにいる空中機動兵のところへと急ぐ。空中機動兵に攻撃する前にまた皇国兵が現れ、銃を撃ってきた。
 動力源のところまで進めないでいると、爆発音が耳に入る。爆発音がしたと思ったら白い煙に覆われて前が見えなくなってしまった。


『また爆発したクポ!煙で見えないクポ!』
「私に任せてください」


 トレイがそう言うと弓を構え目を細める。狙いが定まったのか矢を目一杯引いて放つと、空中機動兵に当たったのかガシャッという音と共に爆発音がした。


『任務達成クポ!……でも列車がもたないクポ!』


 任務達成ということはトレイは見事空中機動兵を倒したということだ。すごいな、と無意識に呟いていたみたいでトレイからそんなことないですよ、と肩を叩かれた。
 空中機動兵を倒したはいいけど、列車の動力源は破壊されたようで徐々に列車のスピードが落ちていく。列車はトンネルを抜けた所にある停車所に止まった。
 黒煙を出している列車から降りて周りを見渡すと、白虎の町の景色が広がっていた。

 また街中での逃走が始まる。