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 再び走り出した私たちは0723地区を抜け、0724地区へと入る。
 0724地区に入ると皇国兵の鎧を着て大剣を担いだヤツがゆっくりとこちらを振り向き、嬉しそうに何かを呟いた。


「ターゲット発見〜」
「な、なにあいつ…!」
「気色悪いですね…」
「アレも皇国兵なのかなぁ〜?」
「皇国兵、なのか?」


 薄気味悪いアレに私たちは固まる。その後ろから皇国兵が走ってきているのを見て、仕方なく気味の悪い敵に向かって攻撃を仕掛けた。しかし、防御力が他の皇国兵たちよりも高いのか私たちの攻撃は全く効いていなかった。


「打撃が効かねぇなら魔法でどうだ!ファイア!」


 サイスさんがファイアを唱えアイツに放つ。ファイアがもろに喰らったのを目を凝らして見ていると、何事もなくこちらに歩いてきていた。
 アイツに魔法は効かないということか。明らかに他の皇国兵とは一味違う。


『あいつ異常な強さを感じるクポ!戦っちゃダメクポ!近づいてきたら逃げるクポ!』


 モーグリの通信にここは大人しく従うことにした。敵の攻撃を避けて次の地区へと走る。
 アイツは走ることができないのか、薄気味悪い唸り声を上げながら歩いて私たちの後ろを着いてきた。あれは一体何者なのか。

 0725地区へと入り皇国兵が私たちに襲いかかる。


「増えた?敵が増えたのか?くくっ……」
「うっ…あいつめちゃくちゃ気持ち悪い…」


 アイツは皇国兵を敵と見なしていた。
 同じ軍服を着ているのに皇国兵を仲間と思っていないようだ。でも仲間じゃなかったらどうしてこんなところにいるのだろう。


「第04特殊部隊?ば、番外者じゃないか!」
「番外者…?」


 皇国兵がうろたえる。アイツの名前は番外者というが、番外者なんて聞いたことがない。
 とりあえず番外者以外の皇国兵を倒していく。番外者は息遣いを荒くしながら少しずつ私たちに近づいてくるのが見えた。その雰囲気が怖い、怖すぎる。

 0726地区に入るとコロッサスと共に皇国兵が攻撃してくる。それに応戦していると背後から番外者のわめき声が聞こえた。


「止まれ!!わずらわせるな……」
「ひぇーあいつかなりヤバいね」
「チッ、あんな気味わりぃヤツなんかこの俺がぶっ潰してやるよコラァ!」
「ナイン、モーグリも言っていただろ、アイツに近づくなって」
「だけどよ…!」
「ここはひとまず逃げるのが先決です、ナイン」


 番外者に対抗しようとするナインをセブンとクイーンが宥める。ナインは番外者を睨んだあと、コロッサスへと八つ当たりのように槍を振るった。
 それを見ていた私は後衛でケアルやウォールで0組のサポートをする。

 そして0727地区に入り、皇国兵を倒しているとリーダーらしき皇国兵が突然私たちから逃げ出した。たった今逃げた皇国兵が解除キーを持っているとモーグリからの通信をうけ、私たちは番外者の攻撃を避け逃げた皇国兵を追い掛ける。

 逃げ着いた先も行き止まりだったが、リーダーの他にも皇国兵が待機していた。「ちょこまか逃げやがってめんどくせぇなオイ!」とナインが槍を振るい敵をなぎ倒していく。
 リーダーを追い詰め仕留めると、皇国兵の懐から解除キーを手にいれ、再び0727地区へと向かった。

 番外者に追い掛けられながらも、0727地区の奥の方に解除キーが入るだろう機械と扉を見つける。


「早く解除キーで中に入ろう!」
「すぐに殺してやる……」


 番外者は未だ私たちを追い掛けてきていた。エースが解除キーを入れると赤く光っていたランプが青く光り、扉が開く。

 急いで中に入り扉を閉めると、皆は安堵の息を吐く。ふとレムさんのほうを見てみると、レムさんは胸をおさえ顔を歪ませて苦しそうに息をしていた。
 それに気付いたマキナがレムさんのほうへと近づく。


「レム……具合が悪いのか?」
「ちょっとめまいがしただけ。すぐ良くなるから」


 皆やマキナに心配をかけまいと振る舞うレムさんに、心配そうな顔をしたデュースさんがレムさんに声をかける。


「少し休みましょうか?」
「ダメですね。ここは敵の目につきやすい。一人のために全員を犠牲にできません」
「な!?」


 クイーンさんの意見は最もだ。
 マキナはクイーンさんの発言に眉を寄せて反論しようとすると、トレイが口を開く。


「もう少し安全な場所まで行こうと言ってるだけですよ」
「…………!」
「わ、私は大丈夫だよ!心配かけちゃってごめんね。行こっ、マキナ」


 マキナの雰囲気にレムさんは慌てて仲裁に入る。マキナはレムさんの後ろ姿を見て、手を握り締めていた。
 ここを抜けようとする前に私はレムさんに近付き、本当に大丈夫?と周りに聞こえないよう言うと、レムさんは大丈夫、と苦しそうに答える。それを見て、何もできない自分が情けなかった。