今日も今日とてナマエを遠目から眺める。
ナマエとは組が違うから休み時間にならないとナマエに会えない。残念だけど、個人の能力によって組が決まってしまうのだ。だからといって今更くよくよしたって仕方がないから、休み時間になるとすぐにナマエに会いに行くことにしている。それで今のところは満足だ。
ちなみにナマエは7組。レムと同じ組である。そしてそのレムと一番仲が良かった。

今から演習時間なのか、着替え用であろう荷物を持っていて、それをぼーっと眺めているとふとナマエに違和感を覚えた。その違和感に首をかしげる。
なんだろう、この違和感。なんか今日のナマエ、いつもとどこか違う気がする。


「ジャック?何難しい顔してるんだ?」
「あ、エイト」


聞きなれた声に顔を上げると、エイトは鍛錬終わりなのかタオルを首にかけて小首を傾げていた。


「いやぁ、ちょっと考え事をね」
「ジャックが考え事?珍しいな」
「やだなぁ、僕だって考えることくらいあるよー」
「へぇー?何考えてたんだ?」
「んー、ナマエのこと」


僕がそう言うとエイトはまたか、というような顔をして僕の隣に並んだ。ナマエはレムと楽しそうに話をしていて、全くこちらに気付かない。休み時間はまだあるから、しばらくはそこにいるだろう。


「ナマエのこと考えてるのっていつもだろ」
「そうなんだけどさぁ、なんか今日のナマエ、どこか違わない?」
「そうか?」


僕の言葉にエイトもナマエに目を移す。エイトの目にナマエはどう映っているんだろう。エイトに限ってナマエを好きになるということはないんだろうけど、やっぱり少し気になった。我慢我慢、そう唱えるように心の中で呟いてると、「オレにはいつものナマエだと思うけどな」とエイトがつぶやいた。


「どこもおかしなところはないと思うけど」
「うーん…そうだよねぇ」
「ジャックの考えすぎじゃないか?」
「でもなーんか気になるんだよなぁ」
「どの辺が?」
「どの辺がって言われても…」


ナマエを頭のてっぺんから足の先まで目を流す。すると、ある一点に目が止まった。
あ、もしかして。


「…エイト」
「ん?」
「僕、わかったかも」
「え?あ、おいジャック!?」


僕はその事実が本当かどうか確認するため、ナマエのもとへ向かう。ナマエは僕に気付いたのか目を丸くさせた。


「ナマエ!」
「ジャック?ど、どしたの?」
「あのさ」


胸、少し大きくなった?

そう言うと、ナマエは目が点となり、そしてみるみるうちに顔を赤くさせた。


「ねぇ、ナマエ…」
「は、な、何言ってんの!そんなの知らないよ!行こ!レム!」
「あ、ちょっと!」
「おいジャックやめとけって!」


エイトに腕を掴まれ、足が止まる。ナマエは顔を赤くさせたまま、レムの手を引っ張って魔導院の外へと出て行った。
ナマエの近くに来てわかった。やっぱり胸、ほんの少しだけど大きくなってた。


「お前な、いくら幼なじみだからってあれはさすがにないぞ」
「えー?幼なじみとしてそういうのはちゃんと確認しとかないと」
「どんな確認の仕方だよ!ていうかそんなの確認しなくていいって…」
「ナマエと僕の仲だからね!エイト、ナマエにちょっかいだしたりしないでよ」


笑顔でそう言って見せるけど、目だけは笑わない。それをエイトも気付いてるのか「ちょっかいだしたりするわけないだろ」とため息をこぼした。

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