僕は今日も朝早く起きる。何のためかというと、小さい頃からの日課を怠らないためだ。起きて早々、服を着替え身支度を整える。髪の毛をセットし終えると、足早に自室を後にした。
目指すは幼なじみの部屋だ。


幼なじみとはナマエのことで、小さい頃からずっと一緒にいた。親同士仲が良かったのか、気付けばナマエがそばにいた。自分の親が亡くなってしまったときは身寄りのない僕をナマエの親が引き取ってくれたらしい。一つ屋根の下で暮らしていたからか、自然とナマエは僕にとって家族以上の存在になった。
その頃からだった、僕がナマエの寝顔観察をするようになったのは。

魔導院に入学したあと、寮暮らしとなってしまったが、入学した翌日からナマエの部屋の場所を特定し、日課のために通い続けている。それを以前エイトに見られたことがあったが、「ほどほどにな」というアドバイスをもらった。顔が呆れ気味だったのはきっと僕の気のせいだろう。


ナマエの部屋に着くとノックすることもなく無断で扉を開ける。こういうことができるのも幼なじみだからこそだ。
部屋に入り、なるべく音を立てないようにベッドに近づく。ベッドには背中をこちらに向けて布団に丸まっているナマエの姿が目に映った。その姿を見て思わず頬が緩む。
ナマエの姿を見ただけで笑みが溢れてくる。 僕はナマエのことが好きだ。それはもう好きとは言い表せられないほどに。僕がそう思っているのをきっと彼女は知らないだろう。
ベッドの縁に手をかけて身を乗り出し、ナマエの顔を覗き込む。昔から変わらない寝顔を見つめていると、ナマエが少しだけ身じろいだ。


「んー…」
「………」


可愛い声に胸の奥が締め付けられる。いつぞやかマキナに言われた言葉を思い出した。
「ナマエのことになるとジャックは別人だよな」と。マキナに言われたくないと思ったけど、確かにその通りだ。僕にはもうナマエがいない世界なんて考えられない。クリスタルの恩恵で死者の記憶を忘れてしまうと頭ではわかっていても、ナマエのことは忘れられる気がしなかった。
そもそもナマエを死なせはしないけれど。何にかえてもナマエだけは守ってみせる。ナマエの隣にいるのは僕だけで充分なのだ。
ふと、誰かが僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。はっとしてナマエを見ると、寝惚け眼で僕を見ているナマエと目があった。


「おはよう、ナマエ」
「おはよう…」
「へへ、今日も来ちゃった」
「ん、飽きないねぇ…」


そう言ってフッと笑うナマエが愛しくて、抱き締めたい衝動をこらえながら僕も笑った。


「飽きるわけないじゃん。これからもずっと飽きなんてこないよ」


ナマエの頭を撫でると、ナマエは照れ臭そうにはにかんで布団の中に潜り込んだ。ナマエの顔も性格も、ナマエがする仕草も、声も全部、僕は好きだ。幼なじみでよかったと改めて思うのだった。


prev - next
back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -