君と彼の距離


 
ルフィは5限目のチャイムと同時に教室へ帰ってきた。

別に何を話すでもなく、俺はボーっと窓の外を眺めて、頭の中では昼休みのウソップとの会話が巡っていた。



「ありゃできてんな」

「は?できてるってルフィと?」

「ホントお前はバカだな。エースとだよ」




できてる、か。そりゃそうだよな。

つか、別にできてるから何だっていうんだよ!何を俺は考えてんだよ!

ブルブルと頭を振って、あの女のことを振り払おうとした。


「おいゾロ」


大体俺は礼言うために探してたんじゃねェのか!?なのに礼も言わず見とれ‥見とれてなんかねェ!


「ゾロくーん」


とりあえず礼さえ言えばこのモヤモヤも晴れるに決まってる!俺は律義なんだ!だから礼言わなかったことが引っかかってんだよ!


「いい加減にしろ!」

「い゛っ!?」


スパーンと気持ちの良い音と共に頭に鈍い感覚が走る。

目を見開き前を向くと、にっこり笑顔の赤髪の先公(シャンクス先生、37歳、国語科担当)。


「次読めって言ってるんだ。呆けてる場合じゃないぞ」

「す、すいません‥」


どっとクラスが笑いに包まれたのは言うまでもない。





 * * *





「ルフィ、帰ろうぜー」

「悪ぃ!俺今日買い出し当番なんだ!」

「買い出し当番?」


ウソップの問いに答えず、じゃあな!とルフィは教室を出て行った。


「なんだよルフィの奴。買い出し当番とかなんとか」

「アイツは謎ばっかだな」

「ホントだぜ。昼休みのことも聞きたかったのによォ」


“昼休みのこと”と聞いて、少なからず胸が鳴った。

気にならない、と言えば嘘になるな。


「しゃあねェ、帰るか、ゾロ」

「あァ」


鞄を肩に提げ俺も教室を出た。


「メロリーン!美しいプリンセス!あなたはまるで太陽のように眩しく僕を虜にする!」


‥ホントにここはバカしか居ねェのか。

俺の目の前をオレンジ髪の女が通り過ぎ、それに続くように目をハートにしながらクルクル回る金髪野郎。

女は俺たちを振り向いて


「ねぇあんたたちこのクラスでしょ?ルフィ知らない?」

「アイツならとっくに帰ったぞ」

「あらそうなの。じゃあ仕方ないわね」

「お前もしかしてルフィの‥」

「バカ言わないでよ。私はルフィの幼なじみ。幼稚園からずっと一緒よ」

「アイツの幼なじみ‥大変だろうな」

「なに、あんた私の苦労わかってくれんの!?」

「あァわかるとも」

「気が合いそうね。私はナミよ」

「俺ァウソップ!んでこっちがゾロだ」

「ウソップにゾロね。よろしく」

「ナミすわぁーん!俺のことも忘れないで!」

「‥こっちはサンジくん。同じクラスなの」

「てめェら!ナミさんに変なことしてみろ!タダじゃおかねェ!」

「素敵眉毛だな」

「んだとてめェ!てめェだって素敵な髪色だなァ!」

「やんのかてめェ!」

「上等だクラァ!」

「やめなさい」


ゴツン、とナミの拳骨が頭にヒットした(コイツ馬鹿力か!)。

必然的に俺と素敵眉毛は頭を下げられ、窓(廊下側)の外が見えた。


「ナミさんの愛の拳!俺は幸せだァ!」

「あーはいはい」

「コイツいつもこんなか?」

「女の子にはみんなこうよ」

「ナミ、お前ルフィにサンジに‥苦労してるな」

「でしょ?わかってくれる人が居てよかったわ」

「なんか俺にできるなら手伝うからな」

「じゃあお金ちょうだい」

「なんでだよ!それはちげェだろ!」

「チッ‥まぁいいわ。そろそろ帰りましょ」

「はーい!ナミすわぁーん!」

「ゾロ帰るぞ」

「‥」

「ゾロ?」

「あ?‥あァ帰るか」


俺は鞄を持ち直し、ナミと素敵眉毛に続いて廊下を歩いた。


窓の外、路地を並んで歩くエースとナマエの姿を横目に。







君と彼の距離
(知りたくはなかった)











「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -