もうすぐ冬島だぞ。
そうジョズに言われて1時間後、船はシンシンと雪の舞う島に停泊した。
着くや早々、久しぶりの雪にエースは興奮気味に島へと飛び降りた。っておい、ちょっと待って!あたしのカイロっ!!
「待ってエース!」
「ひゃっほーっ!!」
あたしの叫びも虚しく、ヤツは奇声と共に街に向かって走って行ってしまった。今思えばアイツは雪ごときで興奮するような男じゃなかった。アイツの目当てはそう、食べ物ただ一つ。
「……」
エースの裏切りにより、すっかり寒くなってしまった。あー寒い。寒い。寒くて死ぬ。
先程まではエースにぴったりくっついて、身体を温めていた。こんな言い方をすればあたしとエースができてるみたいに聞こえるかもしれないが、そんなことは甚だあり得ない。
だってあたしには、ちゃんとした彼氏が居るから。
じゃあ何故その彼氏に温めてもらわないのか。ぶっちゃけ、出来るものならあたしもそうしたい。あんな半裸野郎と一緒にいちゃ変態が移っちゃうからね。うん。あー、あっためてくれないかなー。
「お前、こんなとこに居たのかい」
「マルコっ!」
突然背後から聞こえた大好きな声に勢いよく振り向けば、いつもの如く彼は顔をひきつらせた。
しかしあたしも日々レベルアップしているのだ!そんなものに一々傷付くような柔な心じゃないわよ!
あたしは振り向いた勢いのままガバッと彼の身体に抱きついてやった。ぎゅうっと力強く締め付ければ、それに反するように彼は身体を仰け反らせた。
「おまっ、離れろよい!」
「やーだーっ!寒いんだもん!あっためてぇっ!!」
「嫌だねい!なんで俺が!」
そう言って彼はあたしを引き剥がそうとする。冷たい風が二人の間を駆けていった。ブルッと身体が震えた。あたしだけではない。彼もだった。
「ほら、マルコだって寒いんでしょ?」
「寒くねェよい」
「嘘。だってほら鳥肌」
「寒くねェって言ってんだろい」
つっけんどんにそう言って、マルコはあたしに背を向けた。だけど依然、その肩は小刻みに震えている。
あァどうしよう。可愛くて可愛くて仕方ない。
思わず緩んだ頬を隠しもせず、あたしはその背にぴとっと身体を寄せた。ビクッとその身体が弾んだ。
「お前っ、」
「こうした方があったかいでしょう」
「っ‥!」
「ふふ」
何か言いたげな顔をしていたマルコも寒さには勝てないのか、大人しくあたしに抱き締められていた。いつもツンツンしてるマルコがこうも素直にあたしに抱き締められるなんて。冬島も捨てたもんじゃないなー。寒いけど。
ふふ、と思わず笑みを溢せば、マルコは少しだけ身を捩った。
引き離されるのかな?、と寂しく思ったのに、マルコの行動はあたしの予想に反していた。
フワッとマルコの匂いが鼻から気管を通り抜けていく。背中が温かい。
「背中、冷えてんじゃねェかい」
頭上から降ってくるマルコの言葉。温かい吐息が髪を通して耳に触れる。
どうしよう。ドキドキしてきちゃった。
「マル、コ‥」
「顔上げんじゃねェよい」
「え?」
マルコをもっと感じたくて上げようとした顔は、マルコの左手によってもう一度彼の胸の中に戻されてしまった。
どうして顔を上げちゃダメなんだろう。
「ねぇ、なんで‥?」
「いいから」
マルコの声が耳を擽る。マルコの鼓動が頬を伝って感じられる。
どうしよう。幸せ過ぎて死んじゃいそうだ。
「お前はそこで大人しくしてろよい」
真っ白な雪が舞う中、あなたはあたしの髪にキスをした。
雪化粧にチークを添えて
(真っ赤な僕のほっぺた)
「マルコ」
「ん?」
「あたし幸せすぎて死にそう」
「じゃあ死ねよい」
「えっ!?ひど」
「バッ、おまっ、顔上げんじゃねェよい!」
「……」
「見んなって!」
「‥マルコ、ほっぺが」
「言うなァっ!」
「照れてるの?」
「っ‥」
「あっ!ちょっとマルコっ!」
To 桐原様 From もこ
◎出来たよい!ツンツンマルコ!だけど結局デレちゃった!(笑)