ポカポカ、そんな言葉を具現化したような、日向ぼっこには持ってこいな快晴だった。
「んあーっ!」
麦わら海賊団の海賊船、サウザンドサニー号の芝生の甲板に、船長であるルフィは大きな伸びをしながら寝転がった。
他の船員も各々のことをしていて、正直暇なのである。
「にゃー」
するとどこからか聞こえた、猫のような鳴き声。ルフィは別段不思議がったりはしなかったが、声の主を探すようにうっすら目を開けた。
瞬間、太もも辺りにちょっとした重みを感じた。
「ルフィー」
「おーやっぱりナマエか」
「んふふー」
ルフィの太ももにゴロンと頭をのせたのは、この船のクルーでちゃっかりルフィの恋人のナマエだった。
ルフィはやんわり表情を崩すと、ポンポンとその柔らかい髪を撫でた。
「今日気持ちいねー」
「そうだなー」
「すんごいポカポカ」
「なー」
ルフィの撫で付ける手の心地好さも助けて、ナマエはすぐに夢の世界へ入ってしまいそうだった。
ルフィも手は動かしながら、目を閉じた。
端から見ればなんとも和やかな風景である。
「んにゃー」
「ししっ、お前ホント猫みたいだな」
「気まぐれなとことか?」
「日向ぼっこ好きなとことか甘えたなとことかもな」
「甘えたなのはルフィにだけだよ」
「嘘つけー、お前ナミとかロビンにも甘えてただろ」
「でも男はルフィだけだもん」
太ももにのせていた頭をずらして反転した。腰に腕を回し、スリスリと胸辺りに頬をよせる。
ルフィは擽ったそうに身を捩った。
「擽ってェぞ!ナマエっ」
「へへー、ルフィ好きー」
「馬鹿!俺のが好きだぞ」
「えー、あたしだよ」
「いや、俺だ」
「あーたーしー」
「おーれー」
「むぅ‥馬鹿ルフィ」
「俺は馬鹿だ」
「そこは否定しないと」
「そうなのか?」
「そうだよー」
クスクス、ナマエは笑った。それに吊られてルフィも吹き出した。
二人で一頻り笑って、ナマエはまた体を身動がせた。ルフィも何を察したのか右腕を伸ばして、その上にナマエは頭をのせた。腕枕というやつだ。
「ふふ」
「なんだァ?」
「んーん、幸せだなーって」
ナマエはルフィの胸にちょこんと小さな手をのせた。ルフィは右腕を少し曲げ、ふわふわの髪を透いた。
「ずっと、一緒ならいいのに」
「何言ってんだ、ずっと一緒だぞ!俺はナマエを嫁さんにするんだ」
「ふふ、ありがとう‥ルフィ」
目を閉じた。長い睫毛が揺れた。
「でもね‥怖いんだ」
「何が?」
「人ってさ、いつかは絶対死ぬんだよ?あたしよりルフィが長生きしてくれるなら、それはそれでいいんだけどね」
「それは嫌だ!ナマエが居ねェなんて、嫌だ!」
「‥でも」
「ナマエ、お前が死ぬときは俺の死ぬときだ」
「……」
「だからずっと一緒だ」
な?、とルフィはいつものように笑った。
なんだか胸が熱くなって、泣きそうになって、ナマエはぎゅうっとルフィの体を抱き締めた。
「うおっ」
「馬鹿ルフィ‥」
「だから俺は馬鹿だって」
「だから否定しないと」
顔を胸に埋めたまま、また笑った。ルフィも、ししっと笑った。
「ルフィ大好き」
「おう」
「ずっと、一緒ね?」
「当たり前だ」
幸せ。幸せが溢れていた。
ルフィは鼻を擽る髪にキスをした。
猫と海と太陽と
(僕らの愛に曇りなし)
「またいちゃついてるわよ、あの二人」
「スーパー熱ィぜ」
「うお!キ、キスしたぞ!」
「あんのクソゴム!」
「なんだかこっちまで恥ずかしくて顔赤くなっちゃいますねって赤くなる皮膚ないんですけど!」
「ふふ‥仲良しね、相変わらず」
「つーかなんで隠れる必要あるんだ?」
「いいから!大人しく見とけゾロ!」