誰かのために生きようと思ったよ


 
あの赤髪海賊団に入って、初めての戦闘だった。仲間に助けられて何とか大きな怪我をせずに済んだ。と安心していたのが甘かった。剣に毒が塗ってあるなんてよくあることなのに、敵船から頂戴した酒や食料で宴が開かれたこともあり、つい船医のところに行くのを忘れてしまったのだ。次の日、つまり今日、私は倒れた。


「新入りだっけ?」
「はい…」
「まったく…!2、3日すりゃ元気になるだろうけど、薬は絶対飲むように。それからよく寝ること!」
「わかり、ました…」
「わかったならいい」

船医は眉間のシワを緩めて出て行った。小さく溜め息をついて、コックさんが私の為に作ってくれたというスープに口をつけた途端、ノックもなしに扉が開いた。

「大丈夫か!!!生きてるか!!!」
「ぶっ!!」
「アンタうるさいって!いつも言ってるのに!!」
「あ、スマン」

勢いよく開いた扉の向こうには船長がいた。驚きでむせ込むと、船長が私の寝るベッドまでかけ寄ってきた。せめてスープを丸ごと零さなくてよかった。

「ゲホッ、ゲホッ!」
「おい船医!苦しんでる!」
「だからアンタのせいだって」
「え、」
「ゲホッ…せ、せんちょ…なんで…!!」
「なんでってそりゃ…いきなり倒れたって聞いたら心配するさ」
「なっ…」
「他に怪我はないか?」
「………は、い」

泣いてしまえばこれだから女は、と思われる気がした。そういう人じゃないとしても、涙を零すことを私のプライドは許さない。握った拳の震えが止まらない。憧れだけでこの広い海に身を投げた。やっと巡り合えたその人はまだ未熟な私を受け入れてくれた。それどころか、気にかけてくれた。これ以上嬉しいことはない。

「無理するな」
「……!」

船長の唯一の手が私の手のひらに重なった。ひどく温かいその手は、俯く私の顔を上げさせた。船長は笑っていた。

「はは、ひどい顔だ」
「…っ!」
「泣けばいい」
「船長…」
「船医は何て言ってたかな…2日、3日だったか?なら2日で回復しろ!そして宴だ!」
「ええっ!?」
「お前の笑顔を見れるのを楽しみにしてる。俺だけじゃない。この船の奴ら、みんなが待ってる」
「……はい!」

船長は歯を見せて笑い、部屋を出て行った。また違う誰かのことも励ましに行くのだろうか。この船で、間違ってなかった。憧れることすら、勿体無く感じるような人だ。船長が出て行った後も、しばらく手の温もりは消えなかった。






From 桐原様 to もこ

◎リア友の桐原ちゃんが我が家に遊びに来たとき、「なんか書いてよ」「え‥じゃあ桐原ちゃんも書いてくれる?」「いいよ」という会話から、トランプでキャラ決めをした結果です(笑)桐原ちゃん初のシャンクス\(^^)/うひょーっ!!貴重だよ貴重っ!(笑)もうね、桐原ちゃん大好きちゅっちゅっ(←)










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