全ては始まったばかり


 

「津波だァ〜〜〜っ!!!」


高く上がった波は今にもマリンフォードを飲み込んでしまいそうだった。


「グラララララ」


相変わらずオヤジの力は凄い。まあ、最近じゃこんな力を使うことも滅多になかったけど。


パキ パキ


「“氷河時代(アイスエイジ)”」


津波は高く上がったまま、ガキィーンと凍りつく。

大将青キジ。そう簡単にマリンフォードを潰すような真似はさしてくれないね。


「青キジィ‥!若僧が‥!!」


青キジは上空からオヤジに向かって手をかざす。


「“両棘矛(バルチザン)”!!」


氷の矛が真っ直ぐオヤジに放たれる。だけど、オヤジならそんな攻撃目じゃないね。

案の定、オヤジが大気を殴り、氷を青キジごと砕いてしまった。


「あらら」


しかし相手も海軍大将。海に落ちる前に海を凍らせて、海に落ちるようなヘマはしない。


「砲撃ィイ!!」

「モビーディックを破壊しろォ!」


ドン ドン

大砲がこちら目掛けて放たれる。


「さァ行くぞ」

「良い足場が出来た」


船員たちが船縁に足をかけ始める。


「俺達の力を見せてやれ!!」


あァ、これがオヤジの愛する息子達だ。


「撃ち込めェーっ!!!」


こちらも負けじと砲撃を繰り出す。

しかしそれらは軍艦に当たる前に真っ二つに斬られてしまう。

海軍本部の中将達だ。


「やっぱり相手も手強いね」

「なんだナマエ、ビビってんなら引っ込んでろ」

「バカ言ってんじゃねェよ、あたしはエースを助けんの」

「‥好きにしろ、グラララ」


独り言のつもりだったのに、オヤジにはしっかり聞こえてたみてェだ。

さて、あたしもそろそろ暴れようかな。

腰のサーベルに触れ、柄を握った。

オヤジの横に立ち、前方に目をやればちょうど“鷹の目”が剣を引き抜くところだった。

ドンッ!

一瞬だった。

凄まじい斬撃がこちらに向かって一直線。


「(さすがに止めれねェよ、これは)」


しかし目の前にジョズの姿が見えたから、あたしは動かなかった。

ジョズが全身で斬撃を止めたのを確認して、前方を向けば眩しい光がした。


「“黄金(きん)の魔女”ォ〜‥あの時はよくも逃げてくれたねェ〜」

「なんのことだか」

「忘れてても構わないよォ〜‥どうせここで親子共々消すからねェ〜」


ピカッと眩しい光が差した。


「“八尺瓊曲玉(やさかにのまがたま)”」


ピュン ピュン

光の矢があたし達目掛けて飛んでくる。弾き返そうとサーベルを抜いた。


ドドドン!!


しかしそれは目の前で弾き飛ばされた。青い炎をまとった彼によって。


「いきなり“キング”は取れねェだろうよい」

「コワイねェ〜‥“白ひげ海賊団”」


ボボボボボボォ‥

相変わらず綺麗な炎だ。


「助けなんかいらねェっての」

「‥死ぬんじゃねェぞ」

「誰に言ってんだよ」


ニッと笑って、手をかざした。

バサッ

マルコと黄猿の戦いを横目に、シャーナに飛び乗り空から処刑台に近づく。

その間にマルコが黄猿に蹴りをくらわし、黄猿は地面に打ち付けられた。

が、すぐに起き上がった黄猿はあたしを見上げて、


「巨人部隊!空も注意しなよォー!」

「はっ!!」


大きな斧を掲げた巨人の攻撃が降りかかる。

やっぱり、そう簡単に処刑台に近づくのは無理か。

このままだとシャーナが危ないし、一旦地上に降りるとしよう。


「シャーナ!下!」


シャーナは器用に攻撃をかわしながら、高度を下げていく。

その間にもジョズが氷塊を持ち上げて、今にも海兵達に投げつけようとしている。

ジョズに注意が逸れてる。今しかない。


「“大噴火”!!」


赤犬の灼熱のマグマを避け、海兵や大砲からの砲撃をサーベルで弾き返す。

みんなもよく暴れていて、あちこちで戦火が上がっている。


「オオオオオオオ〜!!」


今までとは比べ物にならないくらいの爆音がした。

シャーナから飛び降りながら視線をやれば、見たことのない巨体。リトルオーズJr.。あたしも会う、つーか見るのは初めてだ。


「シャーナ、少し離れてな」


氷の上に着地しながら海兵を斬り捨てる。

シャーナは少しの間の後、体を縮め飛び立った。


「うおおおおおっ!」


背後からの海兵の攻撃を屈んでかわし、その脇腹に蹴りをいれる。さらに続けて顎を蹴り上げた。

脚力を上げれば常人以上の蹴りを操れる。あたしを女だと思って甘くみないで欲しいね。

それからも次々と襲いかかってくる海兵。きりがない。


「“体力吸収(アブゾーブション)”!!」


一番近くに居た海兵の腹に拳をいれる。全く力の籠っていないそれに一瞬驚いた海兵だが、すぐにその顔は青ざめ、体はヘナヘナとその場に崩れた。

次の海兵も、また次の海兵も、触れた一瞬にヘナヘナと崩れ、体は痩せ細り干からびたようになっていく。

あたしは“力”を操れる。その範囲は自らの“力”だけじゃなく、他人の“力”までもだ。体力や生命力なんてモンを触れた一瞬で奪うことができる。


「よっ、と」


だいぶ人数が減らせたが、それでもまだ極々一部でしかない。

また次の海兵達が押し寄せてくる。


「これじゃいつまで経っても近づけねェじゃん」


小さく息を吐いた瞬間、目の端にギラリと何かが光った。

瞬時に首をずらし、それを受け流す。

ナイフだ。


「フッフッフッフッフッ」


特徴的な笑い声だった。

静かにナイフの飛んできた先を見れば、ピンクの羽毛に身を包んだ長身の男が笑みを称えて広場の淵に立っていた。


「会いたかったぜ、“黄金の魔女”‥いや」


サングラスの下の瞳がわからない。

だけど、それは心底楽しそうな笑みだった。


「エドワード‥ナマエ」










全ては始まったばかり
(楽しもうじゃないか)








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