疼く体は闘いを欲す


 
ガシャーン


天竜人は座席を突き破り扉付近までブッ飛ばされた。

シーンと会場は静まり返っていて、客共はあんぐり口を開け青ざめている。

そんな中、もちろんあたしの口角は上がりっぱなしで、今にも笑い出してしまいそうだ。

パキ‥ポキ‥と麦わらは指を鳴らして


「悪ぃお前ら‥コイツ殴ったら海軍の“大将”が軍艦引っ張って来んだって‥」

「お前がブッ飛ばしたせいで‥斬り損ねた‥」


キン、と刀を鞘に戻すロロノア。ホント、この一味はバカが揃ってる。

嫌いじゃないっていうかむしろ好きだね、このバカさ具合。

各々動き出す麦わらの一味に天竜人がまた怒りを露にする。


「チャルロス兄さま〜!!お父上様にも殴られた事などないのに〜!!!」

「おのれ!下々の身分でよくも息子に手をかけたな!!」


ドンドン、とやたらめったに撃ちまくる。

騒ぎまくる客共は一斉に扉に向かって逃げ惑っていた。


「この世界の創造主の末裔である我々に手を出せばどうなるか」


タンッと麦わらの一味、黒足のサンジが天竜人の手から銃を蹴りあげた。

それを合図にするように全員が暴れ始める。


「(やっべ、ウズウズしてきた)」


カチャと腰に提げたサーベルに手をかけた、つもりだった。しかしあたしが触れたのは腰のベルトだけ。


「(あ、忘れてた)」


あれは鍛冶屋に預けちまってたんだった。


「海軍大将と軍艦を呼べ!!目にものを見せてやれ!!」


天竜人の声がして顔をあげるとこちらに衛兵が飛んでくるのが見えた。誰かがブッ飛ばしたんだろうな。

それを軽く交わす。


「(後でサーベル取りに行かねェと)」


あれは母さんの形見だ。命より大切なもんなんでね。

そんなことを考えていると今度は天井が破られて、またあの変な魚が突っ込んできた。

3匹もの変な魚から降りてきたのは全員麦わらの一味で、その中の一人が天竜人の上に落下した。

こりゃホントにおもしれェな。どいつもこいつもやらかしてくれる。

くく、と小さく笑いを溢した。


「ルフィ!ケイミーは!?」

「あそこだ!首についた爆弾外したらすぐ逃げるぞ!軍艦と大将が来るんだ!」

「えェ!?」

「海軍ならもう来てるぞ、麦わら屋」


そうだ。麦わらの一味にすっかり目がいっちまってて、他にも億越えのルーキーがいることを忘れてた。

声の主はトラファルガーだ。


「何だお前‥何だそのクマ」

「海軍ならオークションが始まる前からずっと、この会場を取り囲んでる」

「えェ!?本当か!?」

「この諸島に本部の駐屯所があるからな」


確かにもう外が騒がしい。

面倒は御免だったのに、しゃあねェか。おもしろかったしな。


「誰を捕まえたかったのかは知らねェが、まさか天竜人がブッ飛ばされる事態になるとは思わなかったろうな」

「トラファルガー・ローね‥あなた‥ルフィ、海賊よ、彼」

「クマもか?」

「‥ふふ、おもしれェもん見せて貰ったよ、麦わら屋一味」


ステージでまた騒ぎが聞こえる。

視線を移すと人魚に銃を向ける天竜人。


「っ!!」


しかし次の瞬間、天竜人がガクンと崩れた。


「ホラ見ろ巨人君、会場はえらい騒ぎだ」


ステージの壁を破って現れたのは白髪白髭のじいさんと巨人。


「(まさか、ね)」


こんなとこで会えるとは。よく話は聞かされていたけど。


「レ‥レイリー」

「おお!ハチじゃないか!そうだな!?久しぶりだ」


それからじいさん‥レイリーさんは周りを見て状況を把握したみてェだ。


「お前達が助けてくれたのか」


さて、と言った瞬間、ビリビリと凄まじい覇気が放たれた。

次々に倒れていく衛兵。


「その麦わら帽子は‥精悍な男によく似合う‥」


やっぱりこの人はただ者じゃねェな。“あの人”が言ってた通りだ。


「会いたかったぞ。モンキー・D・ルフィ」








疼く体は闘いを欲す
(そろそろあたしも暴れたい)











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