放たれた右手は力強く


 
ドカァァン!!

扉をぶち破り、ユースタス・キッドの横を通り抜けた変な魚。

そのまま客席に突っ込んで、モクモクと煙があがる中現れたその人物。


「何だお前もっとうまく着陸しろよ!」

「できるか!トビウオだぞ!おめェが突っ込めっつったんだろ!?」

「だからとにかく乗れって‥言うがお前らサニー号に戻るのに何をそんなに急いでんだよ‥ここどこだ?」


麦わら帽子を被った赤ベストの男、モンキー・D・ルフィと、腹巻きに刀3本腰に提げた男、ロロノア・ゾロ。

麦わらの一味の億越えルーキー。

この場に揃う5人の億越えルーキーたち。楽しくて楽しくて、仕方がない。思わず上がる口角を隠しようがなかった。


「あっ!ケイミー〜っ!!」


ステージに向かって走り出す麦わら。


「ケイミー探したぞ〜!!よかったー!!」

「ちょっと!待て麦わら!何する気だよ!」


突っ走る麦わらを止めるように、麦わらに後ろから飛び付く男。

ザワザワざわめき始めた会場は大きな悲鳴によって静まり返った。


「きゃああ〜〜!!!」

「魚人よ〜!!気持ち悪い〜!!!」


男、もとい魚人が立ち止まってしまった隙に麦わらはステージに近づいている。


「取り抑えろ!麦わらの男を!!」

「お前らァ!ケイミーは売り物じゃねェぞー!!」


麦わらは後ろの状況に気づいちゃいない。麦わらに衛兵たちが飛び付いている間に、魚人は罵声を浴びせられている。

魚人だからって何だって言うんだよな。あたしの知ってる“魚人”は強くて優しい奴だ。ふと脳裏に浮かんだのは、あたしより何倍も大きな体で軽々とあたしを抱き上げてくれた魚人の彼だ。



ドン!ドォンッ!!


「きゃあああああ!!」


煙を吹いた銃口が向けられていた先に倒れて居たのはあの魚人。

銃を持っていたのは天竜人で、楽しげにその場で飛びはねていた。


「むふふふむふーんむふーん♪当たったえ〜!!魚人を仕留めたえ〜!!」


目障りだ。あたしはギリっと奥歯を噛み締めた。

安心したような声を漏らす客共を見たくなくてあたしは視線を足元に落とした。

別にあの魚人に何の感情もねェが、天竜人がやったと思うと胸糞悪ぃ。


「お父上様!ご覧下さい!魚人を捕まえましたえ!!」


さらにギャイギャイ騒ぐ天竜人。

僅かに視線を上げると魚人が麦わらの腕を掴んで何か言っている。


「ゴベンなあ〜‥!」


喋るのも辛いはずなのに必死に何かを伝えている。

ベラベラ喋る魚人に天竜人が黙っている訳はなく、ジャキンとまた銃を構えた。


「魚め〜!撃ったのにまだベラベラ喋って‥お前ムカツクえ〜!!」


直後、魚人の前に腕を出し庇うような仕草をする麦わら。その目はカッと天竜人を睨み付けている。


「(マジかよ)」


「お前もムカツクえ〜!!」


放たれた弾を全てかわし、その右手は真っ直ぐに。







放たれた右手は力強く
(ブッ飛ばされた天竜人)










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