ヒューマンオークション。
人の欲の渦巻く場所。
次々と人に値段がつき売られていく。
「20歳の踊り子パシアです」
司会の声と共に若い女がステージに立たされる。怯えきった絶望しか映さねェ顔。全員同じ顔をしてあそこに立たされる。
「頭‥ありゃ確か“麦わらの一味”の‥」
キラーが指さした先、オレンジ髪の女を先頭に、金髪のスーツ野郎、バカデカイ青髪男、変な生き物が3匹。
「麦わらの船長はいねェな‥どれ程のバカ野郎かお目にかかりたかったが」
アイツらの目的はわからねェが、麦わらの船長がいねェのは残念だな。
ガチャ、ともう一度扉が開いた。
また“麦わらの一味”か?と俺は視線を向けた。
そこには見たこともない金髪の女。麦わらの新しい船員かとも思ったが、女は一味に近寄ることもなくスタスタと俺たちの前を横切る。
すれ違いざまにこちらに笑みを向けて。
「キラー、今の知ってるか?」
「いや。見たことがないな」
女は俺たちから少し離れた店の端の壁に、腕を組みながらもたれかかった。
トラファルガーもチラリと視線を向けていた。
素性も知れねェ女だったが、“ただ者ではない”ということがなんとなく理解できた。
‐ ‐ ‐ ‐ ‐
どうやら麦わらの一味についてきたのは正解みたいだ。
この場には3人の億越えルーキーたち。探す手間が省けたって訳だ。
しかし、どうも気分が悪い。
天竜人が現れるわ、ステージでこれから奴隷にされるって奴が舌噛みきるわ。
人に値段つけて売るっつーことが既におかしいってのに。
そして次にステージに現れたのは丸い水槽。
「(この子が、)」
麦わらの友達の人魚。
「魚人島からやって来た!“人魚”のォケイミー〜!!」
ドッと湧く会場に耳が痛くなった。
とは言ってもあたしも人魚を見るのは初めてだ。ホント、珍しいもんだね。
直後、会場のざわめきも一瞬にして消え去ってしまった。
「5億で買うえ〜!」
耳障り。それから不快。あんな奴に買われちゃ可哀想で仕方ない。
横目で麦わらの一味を見ると顔を青くし固まってしまっている。
どうにかしてやりたいが、あたしも面倒は嫌なんでね。
「まるでこの世の縮図だな。とんだ茶番だ。帰ろうぜ」
隣でユースタス・キッドの声がした。
ごもっともだね。だけど、
「ああああああああああ!!!」
ドカァァン!!
これから楽しいことが始まんのに、帰っちゃ勿体ねェだろ?
前方衝突物にご注意を
(派手に始まるパーティー)