普段、この場所は私の癒しの空間だ。
何かあって凹んだ時とか、物事を考える時、自分の心と向き合う時に来る場所だった。
友達とこの場所へ訪れることなんてしなかったし、親とも来たことがない。
私の秘密の場所。
誰にも教えたりなんかしない。
大切な場所。

「昨日はよく分かりませんでしたが、この場所はとてもいい所ですね。」

そんな大切な場所に、私は初めて一人ではなく誰かと訪れている。
しかも、会って1日と経ってない人と。
それでも、全然嫌な気がしないのは、この少年の持っている空気がそうさせているのか。
それとも。。。

「そこの石の上は私が居たところで、あっちの木のあたりがイオンが居た場所。この石の上で私が夜空を見てたんだけど、右下の方で淡い光が見えたと思ったらそこにイオンが居たの。」

昨日の状況を指差しながら説明を始める。

「淡い光…」

なにか引っかかるところがあったのか、うつむいて考え始めてしまった。

一気に手持ち無沙汰になってしまった私はいつもの特等席に腰を下ろす。
持ってきた荷物を腰元に置いて、辺りを見回した。
いつもは夕方から夜にかけてしか来ないから景色がずい分変わって見える。
なんか…メルヘン?
花が咲き乱れていて、木々は青いし空は快晴。
石の上に横になって、いつも夜しているように空を見上げる。
夜とは違った意味で癒されるなぁ。

「ヒトミ。」

イオンに呼ばれて起き上がると、ワサッと、何かが頭の上に乗っかった。
何かと思ってそれを取ると、それは花冠だった。

「ふふ、よくお似合いですよ。可愛いですヒトミ。」

そう、キラキラとまぶしい笑顔で言われて、顔が赤くなっていくのが分かった。
可愛いなんて言われなれてないし、ましてやそれが男の子からなんて…。
恥ずかしい!
ていうか、わたしより確実に今のあなたが可愛かったから!
そう心の中でつぶやき、せっかくイオンが作ってくれたのだからと、もう一度頭の上に花冠を置いた。

「ありがとうイオン。じゃぁ、あたしもイオンに作ってあげるよ!!」

そういって花畑へと降りて、小さくて可愛い花たちを集めてイオンの頭に乗っけてあげた。
二人で笑いあって頭には花冠って…
どんだけ乙女なん!!
ちょっと冷静になった頃にいろいろ恥ずかしくなったが、まぁ、イオンが楽しそうだからよしとしよう。

「ここに来て何か分かることはあった?」

一通りはしゃいでから聞いてみると、イオンは悲しげに首を横に振った。
そうだよね、そんなにすぐに分かったら苦労はしないよね。

「じゃ、じゃぁ、昨日と同じ時間まで待ってみようか。昼間とは違う何かが見れるかも知れないし、夜に何かが起こったんなら、また何かが起こるのは夜なんだよきっと!」

本当に何が原因なんだろう。
私たちの世界を救うために現れた勇者!
とか、よくありがちな設定を考えてみたけど、イオンにはちょっと無理があるように感じるし、そもそも私の世界は勇者を求めているような世界ではない。

「気を使っていただいて…すみません」

「何いってんの!友達じゃん、気を使ってる訳じゃないよ!」

「友…達…?」

「え!違うの?まさか私の一方通行だった?」

「いえ、いえそんなことは!ただ僕は…今まで友人と呼べる方がいませんでしたので。僕たちは友達と呼ぶ関係なんでしょうか?」

「私はそう思ってるよ。友達の定義なんてそんな難しい事とは分からないけど、私、イオンと居ると楽しいし仲良くなりたいって思うし、それって友達ってことじゃないのかな?」

そういうと、イオンの顔がほのかに赤くなって気がする。

「イオンは…私のこと嫌い?」

「い、いえ、とんでもありません。ヒトミのことを嫌うだなんてそんな!」

「よかった。じゃあ私たち友達だね!」

にっこり笑うと、照れているのかはにかんだ笑顔を向けてくれた。

|
Index / IonTop
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -